手品ゼミ総括

実質的には11月からスタートした、手品を通じてホスピタリティとは何ぞや?を考える、単位の出る自主ゼミ「手品とホスピタリティ(仮名)」であるが、今週でおしまいである。一応、ゼミなので「報告書」を書かせる必要があって、その作業を定期試験後にしていたから、形式的には今週まで続いていたことになる、というだけで、実質的には先月末には終わっていた。もっと言えば、年明けには、受講生の身内に不幸があったりなんやかんやでバラバラになり、まるでサークルの自然消滅のような状態であった。
具体的な目標は、食堂でテーブルホップを体当たり的にやってみて、マジックという一種の変な環境の中での人間とのやりとりの経験をしてみよう、普通の接客では絶対に見られないような何かが発見できるはず‥‥ということだったのだが、かろうじて他人に見せられるレベルに達しているのが、3人のうち1人か、というところであったので、断念せざるを得なかった。
理由は、ひとえにオレのネタチョイスの誤りである。これは、学生のみなさんに申し訳なかった。
詳しく述べると、「テーブルマジックらしい演目」であって、「手品をやってみた気になれる演目」であって、「応用のきくもの」ということから、カードをチョイスしたのである。カードが一組あれば、読心術、出現、消失、交換、貫通、変化、瞬間移動などなど、間接的表現が多いとは言え、思いつくほとんどの現象を起こすことができるからである。ところが、カードの扱いが、初めての人々にはどれほど難しいことであるか、すっかり忘れていた。オレが初めて BICYCLEのカードでマジックを演じたのは小学校のとき、かれこれ20年以上前のことであったのだ‥‥。
カード以外をもっと早くから投入するべきだった。ある意味では、カードより練習は必要かもしれないのだが、それでも、もっともっと「扱い易い」素材があっただろうに。
かくして、‥‥というか、結果的に、「手品はもういいや」という学生を1人作ってしまった。本当に痛恨である。彼は「手品は見るだけでいい」と言ってはいるけれど、これから先、手品を見て楽しめるだろうか。それだけが心配である。