そうだ、室戸、行こう(1日目)

年度末。それは大学教員が出張をしなくてはいけない時期(きっぱり)

ということで、思い立って室戸ジオパークに出かけることにした。2/22(土)-24(月)の2泊3日。もちろん研究調査である。共同研究者の都合が付かなかったので一人旅。前夜になんとか1日目の宿と往復の航空機を押さえた。

やや宿酔気味のまま伊丹から高知龍馬空港へ。たった40分のフライトなので、お楽しみの機内サービスのコンソメスープも慌てて飲み干す。眼下に広がる山々を眺めていると、「ああ、尾根って、道なんだな」と思った。以前から、熊野古道はなぜああいうコースでなければならないのか、地球科学的な根拠は無いものかと思案していたのだが、感覚的には「必然」としか思えなくなってしまった。逆に困った。

預け荷物が無いので到着後すぐに出る。で、すぐに土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線に移動するか、空港でご飯を食べてから移動する=2時間待機か、微妙な感じに。結局後者を選択し、レストランで「みそかつラーメン」なるものを食す。美味しいけど、これは流行る気がしないなぁ。

食事後、ロビーにて翌日の宿を検討。そもそも空港で何となく座ったところでWi-Fiが使えたのは素晴らしい。いろいろ検討した結果、某地区の某旅館を選択。今回の出張は「旅行者から見ると室戸はこういうところである」と言えるために必要な実地調査の意味合いを込めてのチョイス。電話で予約を申し込んだものの、前夜に電話した室戸荘とはだいぶ違う印象‥‥やっぱりこういうところで顧客の印象って変わるんだよね。まさにヤン・カールソン『真実の瞬間』だよなぁ。あと関係ないけど空港で売ってた、お気に入りのごっくん馬路村じゃないゆずジュースも美味しかった。

で、実はそんなに離れていないごめん・なはり線にタクシーで移動。「土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線」と言えば、僕の中ではフジテレビ系「みんなの鉄道」第70回の印象が強過ぎて、空港からの最寄りの後免町駅ではなく後免駅から乗車することにした。胸熱。

後免町駅は空港から近いのだが後免駅は思ったより結構離れていた。

さて、後免駅から、ごめん・なはり線の快速に乗車。女性車掌さんと男性運転手さんのペアで運行。けっこう混んでいた。途中でクロスシートに座れた。自然信仰の本を読みかけて爆睡。

奈半利駅は意外に大きく、農産物特売所だけでなくイタリアンレストランまであった。しかし高知東部交通バスへの乗り換え時間が5分ほどしかなかったので、慌てて写真を撮っていたら、バスが来てしまって、駆け込み乗車。実はその1〜2分前に北川村バスが来て、うっかり乗りそうだったので、あぶなかった、ほっ、として乗車して、車窓から見える影の向きからバスの進路(方角)を類推し、類推し、るいs あれ? これおかしくね? 西に向かってるよこのバス?? あ、対向車線に室戸岬経由ディープシーワールド行きのバスが‥‥あれに乗らないといけなかったのね‥‥

ということで、反対方向に向かうバスから降りたところ、たまたま、田野駅の駅舎の一部である道の駅の前のバス停留所だった。ま、こんなハプニングも旅の醍醐味ってやつだな、と「ラーメン」の幟のはためく道の駅に入る。やっぱりラーメンが食べたい‥‥そう思って入ってみたら、食堂コーナーを見ると、グッチ裕三プロデュース「あなたのピラフ」なるものが!www

トマトが美味でした。


結局1時間遅れのバスに乗って室戸岬へ。1時間ほど揺られて、室戸岬、とーうちゃーく!!

長かった‥‥_| ̄|◯

バス停すぐのところに、あの坂本龍馬とともに刺客の刃に斃れた幕末の志士・中岡慎太郎の像と、室戸ジオパークインフォメーションセンターと、今回の宿「民宿 室戸荘」と、室戸市観光協会+展望台とが並んでいる。ジオパークインフォメーションセンターに入ると、若い女性客2人がスタンプラリー的なものをコンプリートしたと持ち込んできた。その場で表彰式が! なるほど、そういうことか。すぐあとで観光協会の駐車場で見かけたところ女性もう1人? との3人組? のドライブツアーだったようで、うーん、女子会旅行、どういうつもりで来たのか、ひょっっっっっっっとしてジオパーク目当てで来たのか?まさか‥‥と謎が謎を呼びつつ。

戻って、翌朝10時にジオガイドツアーを申し込む。科学コミュニケーション的な視点で、どう語るべきかについていろいろ思うところもあるのだけど、それ以前の問題として、僕自身がガイドツアーをしてもらう経験がほとんどないので、純粋に「地球が好きな客」としてガイドをして欲しいのである。むしろ商売抜きで‥‥だってほら、NHK特集『地球大紀行』の薫陶を受けた世代だから。

ガイドツアー申し込みの時に、少し気になることがあった。ほぼノープランでやってきたので、午前中にジオガイドツアーやったらいいかなー+翌日の宿に夕方までに着けばいいやー、ぐらいしか考えてなくて、そこで話しながらどう過ごすか考えつつジオガイドツアーの条件を付けていったのだけど、そのとき、その係員さんが、「こちらで2泊されるというのは珍しい」というような意味のことをおっしゃったのだ。ジオツーリズムというかツーリズムの振興を考えるならば、「いかにして泊まってもらうか」を考えなければならないはずなのに、1泊で終わりが当たり前みたいな感じなの?と思ってしまった。ちなみに関係ないけど、ポケットサイズに折り畳まれた『室戸世界ジオパークマップ』が、何気にこれミウラ折りじゃんwwwなんという芸細www

浜に出て、しばし夕暮れの室戸岬を鑑賞。ズズーンと腹に響く波音。自らの心のぐちゃぐちゃさ加減に滅入った。おそらく、もう少し平常心に近ければ、全然違うトーンで、この岩、というか、巌の群れを洗う太平洋の波を眺められただろうに、と思った。原稿、原稿、げんk‥‥(バタッ

で、民宿・室戸荘さんである。民宿なるものを利用したのは2年前だったか、金星探査機「あかつき」の打ち上げのドーム映像撮影のために種子島に行き、その後、天候不順で帰れず屋久島に立ち寄ったのが初めてだった。今回の室戸巡検では、そういう「ホテルとは違って民宿だからこそ漂う何か」も含めて室戸を理解したい思いがあったというのもあり、室戸最南端の民宿にお世話になることにしたのだが、楽天トラベルでの口コミコメント通りの素晴らしさ。お風呂でタオルも借りれて、歯ブラシセットもあったし、何より、晩ご飯、超美味い!! これはびっくりした。金目鯛の煮付け、マンボウのモツ煮込みみたいなやつ、ムロアジと乙女マグロ?の刺身、クジラの舌(ニンニクの葉のすりおろし付き)、高知名物カツオのたたき、あと何だっけ、アジが1/10になったような小魚の揚げたやつ、巻貝を爪楊枝でほじくるやつ、海洋深層水で作った野菜の煮付け海洋深層水って塩水だよな‥‥どうやって利用するんだろう‥‥脱塩は浸透膜でやるんだろうけど、塩分=陽イオンが通らないけど水分子は通らないって、それって単なる水ちゃうの?深層水でやる意味あるん?‥‥うーん‥‥)、etc.etc.‥‥そして普段は全く見ない食堂のテレビではソチオリンピックの「みんなが選ぶベストシーン」特集。これで酒が進まない訳が無く、気がつけば6合がカラになってたなどという事態にwwwいやー、ほがらかな女将さんと、これまたほがらかな若旦那に、おおいにリラックスさせてもらった。次回以降も室戸に来るならここを定宿にしたいとマジで思った(備忘録:のれそれ=アナゴ類の稚魚の総称)。設備も確かに「古い」のだけれど、それが、ちゃんとお客さんが絶えずに来ることによって「生きている」ので、何も問題は感じない。それがよく表れているのがトイレがきれいなこと。お客さんにとって、例の「最初の15秒」に次ぐ満足度の決定因子として、トイレがきれいかどうかが重要だということに気付いているかどうか。トイレを見ればそこの経営(の方針と状態)が見えると言っていい。さらにさらに、若旦那がやっているおかげなのか、全館で無線LANがある! これは素晴らしい!!(ある意味では逆に無線LANがあるせいで、ここまで来ても仕事に追い立てられるわけだけど‥‥)

仕事も進まないので、22時過ぎに、ふと、室戸荘さんのホントに目の前の「月見ヶ浜」に出てみた。太平洋と陸地の境目が揺れ動くすぐそばに座り込んで、十数mのところで腹に響く音とともに白波が砕けるのをずっと見ていたら(この地の空海伝説にあやかって)少しは悟りみたいなものが得られるかなと思ったのだが、寒いだけだった‥‥

一晩中、波の音が聞こえて、それが故に静けさが実感される、良い宿だった。こりゃあ、お遍路さんも来るわな。