なぜ美味しいものを食べてたらダイエットできないのか

美味しい酒を飲み、美味しいものを食べる。そうしていると、必ず、太る。

では、美味しいものとはいかなるものか? …「味覚」のような主観性の強い現象に対して、強い制約を与えるような、科学的に根拠がはっきりしたものは、まぁ無いだろうことは想像に難くない。とは言え、経験的に言って、「美味しいものは、たいていはカロリーが高い」ってのは、かなり当たっているんではなかろうか。実際、太るということは、カロリー=熱として転換する作業が追いつかないエネルギー分の栄養を備蓄するシステムなわけで、美味しいものを食べてたら太ったというのはまさにそれを「体現」してるように見える。

問いを逆にしてみよう。なぜ、その「余剰なエネルギーを含むような飲食物」を「美味しい」と、ひとは認識してしまうのだろうか。

ひとびとの行動スタイルは「文化」が決めるのであるとする文化屋さんには叱られるのだろうけど、これは進化論的な自然淘汰の中で培われた本能的な感覚なのではなかろうか。

つまりこういうことだ。

いわゆる「人間圏」を生み出す前のホモ・サピエンスは、軟弱で、草原では肉食獣のエサになってしまうような存在だった。当然、生存競争というシステム、食物連鎖のピラミッドの中では、下層ではないとは言え、上に強力な層がある。潤沢な栄養環境には無い。そんな中でも生物的に、あるいは種としてやっていけるような恒常性維持システム‥‥いまのことばで言えば、「カロリーの低い貧相な食事であっても滅びないようなからだのしくみ」を、進化の中で獲得したからこそ、いまを生き延びているのではなかろうか。そして、そのようにからだの維持・成長を最低限度に保証するカロリーレベルの食事がかろうじて摂取できるか否かの世界で獲得した味覚は、おそらく、「よりカロリーの高い食事」を「より良いもの」‥‥つまり「美味しい」と認識するような仕組みを組み上げてきたのではなかろうか。

まぁ、ダイエットできない言い訳なんだけども。