火星赤道クレーター底に地下氷発見?のレター(Shean, 2010)の紹介文

Eos, Vol. 92, No. 7, 15 Feb. 2011のResearch Spotlight欄に掲載の、Evidence for water ice near the Martian equatorと題する記事の和訳。ソースの論文は Shean, D. E. (2010), Candidate ice‐rich material within equatorial craters on Mars, Geophys. Res. Lett., 37, L24202, doi:10.1029/2010GL045181。



火星上の水を探す時、最も明白なターゲットは極冠のある極域である。しかし、Sheanは水の氷または水とデブリの混合状態が、埋まっていると思われるものを、火星赤道付近のSinus Sabaeusの辺りにある38個のクレータ内に見つけた。先行研究によれば、水は過去に赤道付近に存在したことが示唆されているものの、現在の火星気候は赤道付近に水の氷が存在するには適していないと考えられている。

探査機からの画像を用いて著者は、赤道のクレータの底に、見たところ「その他の地方ならどこでも(特に30°-60°N/Sの中緯度のクレータに)見られる、地下の氷と思われるもの」と同様なものを発見した。彼はさらに30個のクレータでこの氷のようなものが部分的または完全に失われてしまっていること、それが地下氷であったことが示唆されるような痕跡を残していること、も見出した。

これらの発見は火星は自転軸の傾きが遷移する際に劇的な気候変動を経験するのだとする考えを裏付ける。地球の自転軸は多少はよろよろしているが現在の23.4°から数度以内に収まる傾向にある。火星の自転軸の傾きは、現在は25.2°に留まっているが、0°〜60°の間を行ったり来たりしてきたと考えられている。火星大気大循環モデルによれば、自転軸の傾きが35°—40°を超えると、Sinus Sabaeus地方は氷の安定性と、特に降雪量がアップするのではないかと示唆される。このような状況は過去1000万年間で複数回起こっていた。そしてデブリかまたは他の浸透性の低い物質の下に埋もれているために、氷は最近の(俺注:modern)火星気候でも生き残ってきたのだ。