科学とハリウッドはどうすれば共に歩めるか?

2010年12月のアメリカ地球物理学連合(AGU; American Geophysical Union)の秋季年会で、科学とハリウッドがどうすれば仲良くやっていけるかを考える催しがあった。そのレポートが機関紙Eosに掲載されていた(NEWS: How Science and Hollywood Can Work Together Is Focus of Fall Meeting Panel, Eos, Vol. 92, No. 3, 18 January 2011)ので、サイエンス・コミュニケーションを考えるネタになるかと以下全訳。


Jon Amielは2003年に話題をかっさらったSF超大作The Coreのディレクターである。彼は先日のアメリカ地球物理学連合(AGU)の秋季年会(俺注:2010年12月、サンフランシスコ)で、部屋を埋め尽くした地球物理学者達に向けて告白したいことがあると言った。
告白とは、人類が地球の核の自転をスタートさせたりストップさせたりできるとかいうような、彼が映画の「不合理な設定」と呼ぶものとは関係なかった。火曜の午後に行われた「科学と映画:AGUの科学とハリウッドが出会うとき」のセッションでのプレゼンテーションで、彼が長年夢見ていたこと、即ち「ヘロヘロのTシャツでステージに上がること」だった。彼が言うには「今この夢が叶ったた。ここに今私は立っている。私は部屋いっぱいの地球物理学者達に向けてThe Coreの話をしている。私はT-shirtがこんなにshortだとは今まで考えたことも無かった。」

AmielはCharles Darwinを扱った2009年の映画Creationも担当している。曰く「全ての科学は、その中に、グレートなミステリーを内包しているんだ。」そして「中心となるアイデアがぶっとんでしまわないようにしながら」できるだけ多くのサイエンスをThe Coreに組み込んだと述べた。また彼は、映画に携わっている間ずっと、深部地球科学に没頭し、魅了されるようになった、とも付け加えた。

Amielは、AGUとthe Science and Entertainment Exchangeの共催のこのイベントのパネリストの1人だった。The Science and Entertainment Exchangeはできてから2年半のthe U.S. National Academy of Scienceのプログラムで、科学者とエンターテインメント産業とのコミュニケーションを助成している。the National Academies' Office of Communicationsの専務副理事のAnn Merchantは、このプログラムは科学者とハリウッドの間の「文化的会話」の促進を援助していると述べた。「私たちは1-800-I-need-a-scientistよ」と「1-800」の電話番号をもじって言った。「まるでノーベル短縮電話賞の受賞者が居るみたいだって誰かが言ってたわ」

彼女曰く、the Exchangeプログラムは「不正確なことを取り締まる警察ではない」。その目的は「楽しい空想話をいちいちひっくり返してハリウッド映画界をドキュメンタリーに従事させるためではない。なぜならそんなことをしたら、ハリウッド映画は楽しくなくなるし」、むしろハリウッド映画は人々を科学へ誘うようなものにはならないだろうから。「双方に歩み寄りが必要」と、科学とハリウッドを引き合いに出して語った。

司会(モデレータ)のSidney Perkowitzはキーとなる質問をいくつか提起した。その中には、科学とスクリーンの中の社会についての問題を、そういった問題についての一般の意識を高めるために大げさに取り上げるのが良いことなのかとか、悪い科学ネタでさえもある種のaccidental curriculumという意味で良い教材になり得るのかどうかとか、そういう問題を含まれていた。

「皆さんが、SF映画の中のサイエンスがどれだけ良くないかとかどれだけ間違っているかと考えていようと、いくらか価値のあるホンモノのサイエンスがその背後にはあるし、そのホンモノのサイエンスはとってもとってもとってもたくさんの人々に届く」と、ジョージア州アトランタのエモリー大学物理学教授であり、Hollywood Scienceの著者であるPerkowitzは述べた。彼は売上60位までのハリウッド映画の1/3はSFで、興行収益28億ドルでトップのAvatarも含まれている。また彼曰く、観衆はSF映画をその特殊効果のために楽しんでいて、ハリウッドは収入額のためにSF映画に価値を置いているのだが、その一方で、科学者達はしばしば、それらSF映画が科学界の大問題をどれだけ反映しているか、どれだけ映画が若者達を科学者になろうとインスパイアできるか、に興味を持っている。

Perkowitzは、約5億5000万ドル稼いだ2004年の地球温暖化を扱った映画The Day After Tomorrowは、たくさんの正しい事実を扱ったが、10年単位ではなく週単位で変化が起こるほどに物事のテンポを上げてしまった、と話した。彼によれば、科学者たちの中には「そこまで自由奔放なのかよ、とご立腹な人も居た。しかしこの映画を見た人たちは、少なくとも地球温暖化について知ること、地球温暖化が問題なのかもしれないと考えることが重要であると、より一層気付くことになった。」

Perkowitzが年会会場で簡単にアンケートをとってみて見積もったところ、会場の聴衆の約半数がこの映画の自由っぷりに腹を立てていて、半数はある問題についての公衆の意識を高めるために映画内で真実を引き伸ばしてしまうことは構わないという意思を示した。

パネリストのBruce Joel Rubinは、地球と衝突する彗星をテーマにした1998年の映画Deep Impactの脚本家である。彼は「私は腹が立った。私はもちろん制作者達が何をしていたかは理解していた。そしてそれは筋が通っていた。映し出された光景は正しかった。私が少し賛成しかねたのは、誰もがそれによって地球温暖化に気付いた、とすることだ。私が思うに、あの映画を見た人たち全員が、地球温暖化を物語であり、フィクションであり、現実に起こっていることとは逆のものであると気付かされていた。このように矮小化してしまうと、問題を引き起こす。これは単なるお話ではないのだと人々に確かに思わせる方法をみんな見つけないといけない。あなたが見つけるんです—そのことを軽んじたり見ない振りをする必要はないんです—皆さんはスマートで且つ楽しめる方法を見つけられると私は思いますし、それがずっと待望されていることです。」

Rubinは、Deep Impactが色んな面で科学的に正確になるように手を尽くし、また科学者達に相談したと語った。地球への衝突が地殻の激変を伴うかもしれないものである可能性について十分に注意が払えていないのではないかと心配していた。「彗星接近の状況で起こっていることのせいで、私は非常に急進的な考え方をするようになった。政府が殆ど関心を示さないことに私は驚いた。私にとっては、私がシナリオを書いている最中にさえ、この映画の主題は非常にリアルに感じられるようになっていった。これは知らなければならないことであって、一般市民が気付けるように映画として発表しなければならない。私は、今や全世界がこの起こり得る危機について気付いていると思う。」

彼はは言う。作家は「自分が語るそのストーリーの重要なスポークスマンになれる。あまり怒られないでやれさえすれば。」

詳しくは、http://scienceandentertainmentexchange.org/index.html を御参照下さい。

—Randy Showstack, Staff Writer