地下水等総合観測による巨大地震予測, 小泉, JGL, Vol. 5, No. 2, 3-5, 2009

東海・東南海・南海地震

東海〜四国の沖合にある駿河南海トラフでは、100-200年程度の間隔で、M8クラスの巨大地震が繰り返し発生してきた。最近のものは:

この2つの地震では、震源域が駿河トラフまで及んでいなかった。⇒駿河トラフでの巨大地震(いわゆる東海地震が切迫しているとされた。
で、地震予知事業が始まった。

南海地震における地下水変化

  • 684年以降、南海地震は過去8回発生
  • 地下水位や温泉湧出量が地震前に低下する地点は、紀伊半島〜四国の太平洋岸周辺に広範囲に存在
    • ただし出現率としては低い
  • 現在、地震の前兆現象として最も有望視されているのは、地震の数日前に本震の震源域周辺で生じるとされる「ゆっくり滑り」(プレスリップ)に伴う地殻変動
  • 南海トラフのプレート境界で逆断層型の滑り(俺注:断層面への圧力が高まって、断層面の上側の地殻が滑り上がるタイプ)が生じれば、四国や紀伊半島の太平洋岸では一般に地盤が隆起し、体積歪は増加
    • 地盤は膨張=地面が上昇=地面から見ると海水面は下がる
  • 四国や紀伊半島の太平洋岸の(海水と圧力平衡状態にある)浅い不圧地下水*1の推移は、地震前に、地盤の隆起量と同程度に相対的に低下し得る
    • 海水面が(相対的に)下がる=海水面と圧力平衡状態にある井戸水の表面も下がるパスカルの原理)
  • 温泉水等の深部地下水=被圧地下水*2の水位や湧出量も低下するだろう
  • 浅い(不圧)地下水の地震前の変化についてはプレスリップモデルで定性的に説明可能
    • 予測される隆起量が最大でも数cm程度なので、実際の水位低下の数十cm以上の振幅は説明できない

(以下、自分とこの観測網の自慢なので略)

*1:不圧地下水=水を通さない地層や岩盤の上にある自由水面を持つもの

*2:被圧地下水=水を通さない地層に挟まれた地層や岩盤の割れ目系に存在する、自由水面を持たないもの。一般に体積歪み変化に対して敏感に水圧を変化させる。