地震以外の“揺れ”から探る地球内部構造, 西田, JGL, Vol.6, No.1, 7-9, 2010

俺注:2010 AGU Fall Meetingで出会った、地震研の学生がこの人の弟子のようだ。MELOSランダーに載せるためのまさにこの論文で解説される手法で内部探査をするためのキッチン惑星科学的な開発をしている、と話していた。

地震波干渉法

  • 地震波は、固い場所を通ってくる場合には観測点に早く到達し、柔らかい場所を通ってくる場合には遅く到達する。
  • 脈動とは、海洋波浪によってランダムに励起された表面波
    • 卓越周期は約7秒
    • 海から遠く離れた大陸地域でもはっきりと観測される
    • 地震観測をする上では単なるノイズと長い間考えられてきた
      • 常にいろいろな方向から到来しているため、地震が引き起こした地震波を隠してしまう
        • 等方的なことを逆手に取って干渉法を使えることがわかってきた

干渉法

  1. 2地点の振動を観測する
  2. 2地点の観測記録の相互相関関数を算出
    • 観測点間の地震波の伝搬特性を抽出できる
  3. あたかも一方のの観測点で地震が発生し、他方の観測点で観測しているかのような波形が現れる
    • この記録は2観測点間の速度構造の情報を含む
  • この手法で全地球的な構造を調べるには、全球的に伝播する周期数100秒の地面の振動を調べる必要がある
    • 長らく局所的な地殻構造の研究に限定されてきた

常時地球自由振動の発見

  • 大気擾乱の大きさを理論的に見積り、大気擾乱が観測可能なレベルの振動を引き起こし得ることを示した(Kobayashi and Nishida, 1998)
  • 地震活動が静穏な期間においても、周期数100秒の帯域で固体地球が振動し続けている現象が発見された
    • 海洋波浪や大気現象が励起源
      • 海洋や大気現象が常に地球のあらゆるところを叩いているため、あらゆる方向に伝わる地震波が励起されている

惑震学

  • 地震」を使わないので、地球以外の惑星の内部探査に有効かもしれない
    • 何が地面を揺すっているのかは、惑星によってまちまちだが‥‥
  • 火星上に5点の広帯域地震計が地球と同程度の条件で設置でき、常時火星自由振動を一年間連続観測可能と仮定すれば、地球と同様の解析から表面波を検出できる可能性が示されている(Nishida et al., 2009, Science, 326, 112)