H-IIAロケット17号機打上げ撮影ダイジェスト(3)中盤戦〜任務完了まで

May 20 中盤戦〜任務完了まで

機材のテストも終わり、資材調達(ガムテープ、防水処置に使うゴミ袋など)等々のために外出。宇宙センター近くの「冷水商店」が素晴らしい。お土産を買い込み、宅急便で発送。温泉に入り、ジーパンを洗って(笑)、泊まっていたホテルのロビーで仕事をする。Macが接続可能な無線LANは、今のところここしかない。19時半まで粘って、退出。晩飯を食い、食料を買い込んで、いざプレスセンターへ。巻層雲・巻積雲越しに月の姿がはっきり見え、雲の間からは北斗七星や土星が見える、よい天気だった。
余談だが、レンタカーは、本当に偶然に、屋根に荷物用のバーが装着されたタイプだった。これが無かったら、ホテルからの機材運搬はできなかったかもしれない。来る時は何とか車内に詰め込めたのだが、いろいろと荷物が増えたのだ。ということで、風呂場で洗ったジーパンが全く乾かないため、このバーにロープでジーパンを結びつけて、吹き流し状態にして走行した。そんなにぶっ飛ばすわけでもないので千切れて飛んで行くことはないのだが、走行中は周囲から見たらどう見えるのだろう。
21時ちょうど頃、プレスセンターに入る。現場のセッティングを考えるうち、テーブルタップが足りないことに気付く。ジーパンを乾かしがてら(笑)コンビニへ走った。その後、O氏、Y女史はプレスセンターにて椅子を並べて仮眠モード。俺はクルマで仮眠をとることにした。この頃には、地表付近は少しもやにつつまれていた。黒潮から立ち上る暖湿な空気が北風で冷えた蒸気霧だろうか。車内で電池の続く限りPCで仕事をして、ケータイで将棋を2局やって(笑)、寝ようと横になったのが23時。
いきなり後ろのドアが開いて超びっくりする。OさんとYさんが仕事を始めたようだ。時計を見たら3時だった。そんなに寝てたのかと小びっくりする。外の霧はあまり治まっていない。ぱらぱら来る可能性があるので、外に出る直前の廊下の端っこに機材を置かせてもらう。
0430。セッティング完了。システム試運転。東の空は薄明が始まった。霧は晴れてきた。視界が良くなって分かったことは、上空は雲がたーくさんあってヤバいということだった。
0445。試運転完了。良好!風が強まってくる。風向はほぼ真西。
0515。バルーンが連続してあげられ、飛行機も飛ぶ。我々が考えるよりも微妙なんだろうか。それとも慎重に進めているだけなのだろうか。もうすっかり明るい。
以後、リフトオフまですることがない待機。この間に、俺は通常のビデオカメラでズームで追いかける映像と音声を撮る(録る)ことになった。
「Xマイナス60分」のコールが響く。「X」というのは打上げ時刻のこと。以後しばらく、5分おきにコール。X−20分の辺りだったか、最終GOの判断が出たとのアナウンス。以後、場内はカウントダウンのコールと、日本語と英語が交互の解説のアナウンスとが鳴り響く。アナウンスを聞いていると、長く感じられたカウントダウンと待機時間があっという間に過ぎていく。X−8分から秒単位のカウントダウンになる。かなりそわそわする。480から一つずつカウントダウンしていけば、必ず10,9,8,,7,..になるってのは当たり前なのだが、いざカウントダウンが一ケタになると、ものすごい緊張感である。
3秒前ぐらい。メインエンジンに火がともる。そして、補助エンジンに火がともり、合計の推力が重力を上回った瞬間、ちょうどその瞬間が、リフトオフ!
3km離れた現場では、10秒ほど遅れて音が聞こえる。少し上がり始めたところで、「カーン!」という爆音が届いた。ニュースなどで戦艦からのミサイル発射の音声付きのVTRが見られることがあるが、まさにあの音である。
ぐんぐん加速していく。ビデオで追いかける。始めのうちは肉眼でもチラチラと見ることもできたが、加速するにつれてビデオのモニタで見ながら必死で追いかけた。かなり上空まで晴れていたので、カメラが三脚上でいっぱいいっぱい上向きになったところで見失った。
モニタから目を離し、眼前を見てびっくり。すごい煙の柱。
2分も経ったか経たないかの頃、アナウンスで「現在の高度は105kmです」ええっ!?もうそんなに?っていうかそれもう宇宙やん。速っ!
ロケットはあっという間に去ってしまったが、目の前の煙の柱はすごい。高さ100kmの柱。しかもまだ機体が見えている。そうか、宇宙に出ていても肉眼で見えるんだ。びっくり。ぐねっと曲がったところが対流圏界面なのだろう。
その後、第1段ロケット停止、切り離し、ミニ衛星3つの放出、第2段ロケット点火、一旦停止、等々のアナウンスが、カウントアップと共に流れるのを耳にしながら、大慌てで撤収作業開始。大掛かりな上に、機材が運搬に極めて不向きなものばかりなので、報道各社が動き始める前に撤収したかったのだ(報道各社の機材は、大掛かりでも運搬しやすくなっている)。
現場からプレスセンターへと機材を引き上げるも、ちょうど俺たちのブースの前で合同記者会見状態というか囲み取材状態になっていて、困る。少しずつ片付けを進める。汗びっしょりになる。
0811。撤収完了。退出!
0840。宅急便にて可能な限り機材を発送。
以上で種子島にて行う全ての撮影関連工程は完了!