講演「光と風景の惑星科学」

公開講座で一発、講演してきた。
うーん。総合点で60点はクリアできたと思うが、70点には届かない感じ。トークのみなら不合格。

120分の枠内で、途中に10分ほどの休憩時間を挟んで。50分強の講演を2回やるようなものである。前編は「光と大気の織り成す風景」、後編は「地球はどんな星か」であった。前編は普段担当している授業でも話す(話した)内容、後編は現在、「実演」にかけながら育てている最中のコンテンツである。

一番のネックだったのは、前編の冒頭である。要するに、内容は大気光学の諸現象のからくりを納得してもらう、というもので、昔から「火星の青い夕焼け」としてしゃべっていたコンテンツの延長である。
だから、どうしても、「光の波長」と「反射・散乱・吸収」の説明が必要になってくる。これをドロップアウトさせないように解説するのは大変に困難なのである。困難だが、何としてもオレが越えなくてはならないハードルだ。なぜなら、その向こうにオレのやりたいことがあるからだ。

さて観衆は140人程度だったのだが、その8割程度が、明らかに60歳以上という、超高齢化聴衆であった。つまり、老後‥‥と言っては失礼なのか失礼でないのかよくわからないが、そういう時期を過ごしている方々が、自分を奮い立たせて?勉強するぞ!と飛び込んできたわけである。単位のためにしかたなく来ている学生とは違う。何としてでも聞こう、というモチベーションの高い人々だ。そのような聴衆なのだから、全員‥‥は無理でも8〜9割は満足げな顔をさせないといけない。だが結果は半数近くの大興奮顔と、半数近くの苦虫噛み潰し顔という、両極端に分かれた状態のように、少なくとも前から見ている限りそうだった。これでは講演者としては落第、ざっと50点以下ってとこだろう。

プレゼン技術に関する側面から見ても、気をつけなければならないことが分かっていたのにやってしまった大きな失敗があった(これは別稿にて記すことにする)。

ではなぜあと20点ぐらい加算されているかというと、思わぬ収穫があったのだ。それは講演資料として配布された「レジメ」である。

昔のOHP世代の方々と異なり、パワーポイント世代のプレゼンは、発表の直前まで手を入れている。これは良い意味の場合も、悪い意味の場合もある。悪い意味は、要は準備が足りてないということ。良い意味は、直前に思いついたナイスアイデアを突っ込むことができるということ。実際、今日も南海特急の車内で突然ナイスアイデアを思いつき、光が波であることをを説明する画像を「Grapher」で作った。

となると、トーク内容を完全にまとめたものは、事前にはリリースできないのである。だから、配布資料には、「絶対にこの内容だけは話す」ということしか書けない。今回は、それを10個の箇条書き(各200〜300字程度)にまとめた。

しかし、それにしても、事前に話のオチをさらす、というのも、関西人としては受け入れがたいスタイルである。先に書いてしまったら、もう講演聞かなくていいよ、ってなってもおかしくない。

だから結局、試みとして、レジメは穴埋め問題形式にしてみた。講演の最後に答え合わせタイムを設け、自分の手でレジメを完成して帰ってもらう、ということである。

これが予想外の大ヒットであった。これのおかげで最後まで聞けた、最後の答え合わせで復習できてよかった、等々、見方によっては本編のトークよりも大絶賛であった。これは収穫であった。