マーカ・テンドー師逝去

いやー、シンプルな言葉だが、とにかく、残念である。
思えば、オレが現在のようなクロースアップ・マジック中毒になるきっかけは、マーカ・テンドー師だった。
20数年前、いやもう30年ぐらい前か、何かバラエティ的なスペシャル番組で、師がトライアンフ、アンビシャスカード、ポーカーデモンストレーションなどをやっていたのを、兄が録画していたのだ。何度か見ながら、9つ年上で当時既に高校生だった兄と「すげえなぁ、不思議だなぁ」と感嘆していたのを覚えている。そのときに、兄からエース・ボナンザを教わって、小学校の何かのクラス内発表会で演じたから、小学4年生だったはずだ(ちなみにそのマジックショーでのもう一つの演目は、ラップの芯で自作したチャイニーズ・ステッキだった)。
その数年後中学生になり、何かのきっかけ(たぶん、「世界のマジックショー」のスタジオ・トークに出演していたマジック・クリスチャン師を見た時だと思う)で、再びエンジンがかかる。そのとき、バイシクルを買ってきて(既に大学生だった兄はトリックスでメンタルフォトデックを買っていた)、オレは、数年前に見たあのマーカ・テンドー師のビデオを引っ張り出してきて、解析に解析を重ね、見破ったというよりも、「何やってるかわかんないけど、こういうことをすれば同じように見える動作で同じ結果が出せる」ところまで行き着く。10年ほど後に「カードマジック事典」によってターンノーバー・パスであることがわかるこの技法を武器に、どんどんカードマジックをやるようになり、クロースアップ・マジックの底なし沼に嬉々として沈んでいったのである。
今から思えば、ビデオ録画から自力でターンノーバー・パスを作り出した当時のオレの頑張りは、ほめてやってもいいと思う(笑)。ちなみにオレのターン〜の指の配置が一般的なそれと少し異なるのはこの名残である。
その後、NHKの音楽番組で師のレギュラーコーナーがあったときなどは、いつも録画して研究していた。森公美子とかがでっかい声で驚いてたのを思い出す。今でも(映像は残っていないが)現象を再現できる手順を作ったときのメモは残っている。師のファンの多くはステージ・アクトに向いているのだろうが、オレにとっては間違いなくクロースアップのアイドルだった。
メモを引っ張り出してきて、久しぶりにやってみようかと思う。
合掌。