van de Hulst, "Light Scattering by Small Particles", §2.5

2.5 偏光に対する散乱分布図
F(θ,φ)はどのように散乱粒子の形状・サイズに依存するのだろうか?それが本書の主題であり、第6章〜第17章で取り扱う。ではF(θ,φ)は入射光の偏光状態にどのように依存するだろうか?ここではこの問題を、位相の効果を考えずに済む範囲で考えてみよう。式の導出は第4.41, 5.13, 5.14節で行うことにする。

散乱光の強度と偏光状態の両方が、入射光の強度と偏光状態の両方にどのように依存するかを完全に記述する関係式は、行列を含む以下の方程式で表される。
{I, Q, U, V} = ....
ここでI, Q, U, Vは5.13節で解説する、散乱光のStokesパラメータで、I0、Q0、U0、V0は入射光のそれである。行列Fは16個の要素を持ち、角要素は入射光・散乱光の方向の関数(実関数)である。この行列方程式は4つの方程式を含んでいる。第1のものは
I = .....
である。これと2.1節の式を比べると、Fの値は次のように書ける。
F = .....
この式はFが入射光の偏光状態にどのように依存するかを決める式であり、Q0/I0、U0/I0、V0/I0によって決まっている。自然光が入射光の場合には第2項以下はゼロであり、
F = F11
となる。

最も一般的な場合には、行列Fは非対称である。単一の粒子の場合、独立な要素の数は7個に減る。16個の要素の間に 9個の関係式が存在するからである(5.14節参照)。多数の粒子から成る雲では、実際、要素の数は16個のままである。しかし実用上ほとんどの場合には、独立要素の数は対称性により減ってしまう(5.2、5.3節参照)。例えば、単一の均質球形粒子についての散乱行列はi1、i2、δの3つの独立要素(これらは角θの関数)で特徴づけられる(4.42節および9.31節参照)。この場合、16個の要素のうち10個がゼロであり、残りの6個は複素振幅関数 S1(θ)、S2(θ)の2次関数である。完全な方程式系は4.42節を参照されたい。