van de Hulst "Light Scattering by Small Particles" §20序文〜20.1

20. 気象学への応用
太陽光あるいは星からの光は、地球大気を通過する際に弱められる。この効果---天文学的減光---の波長依存性についての研究は、大気の散乱特性を調べる方法の一つである。昼間の空の光の分布は、やはり波長依存性についてのさらに多くの情報をもたらしてくれる。減光と散乱、どちらのタイプの測定も人工の光源(例えばサーチライト・ビーム)によって繰り返すことができ、霧や雨などの濃い媒質を調べるのに便利な手法である。さらに最近では、レーダーも強力な手段として加えられている。

20.1 減光成分

晴れた空における減光は以下に挙げる過程に由来する3つの成分から成る。

a. 空気分子によるRayleigh散乱
b. エアロゾル(ヘイズやダスト)による散乱
c. 空気分子による選択的吸収

晴れた空からの散乱光として観測されるのはaとbによる成分だけである。

成分aはもうおなじみのλ^-4則に従う。その中における変動は、大気総量(大気量 air mass)の季節変動、水蒸気量の変動、そしておそらく a < 0.02μ の極めて小さい水滴の数の変動によるものである。

成分bは非常に変化に富んだ、通常は半径1μ未満の粒子による散乱に起因する。空間的にも時間的にも非常に大きな変動を示し、またこの成分があることが壮麗な空の色に大きく寄与している。

成分cは、O2、H2O、CO2等々の分子の吸収帯の他に、可視スペクトルのかなりをカバーし且つエアロゾルの無いときのλ^-4則の盛り上がった部分を作るオゾンのChappuis連続帯を含んでいる。

20.2節では、エアロゾルの研究のいくつかの例を概説する。その他の成分についての議論は Pernter and Exner (1910)、Dorno (1919), Minnaert (1940)、Middleton (1941)、van de Hulst (1949)、Sekara (1951)、Neuberger (1951)を参考にされたい。1次のRayleigh散乱のパターンは非常にシンプルではあるにしても、2次あるいは多重散乱を偏光を含めて正しく扱おうとすると問題は極端に難しくなる。この問題が初めて解かれたのはChandrasekhar (1950)、Chandrasekhar and Elbert (1954) であった。Deirmendjian and Sekara (1954, 1955) も参照されたい。

van de Hulst (1948, 1949) はより基本的な様式である等方的な一次散乱のケースについて地表での乱反射を含めた多重散乱を採り上げた。より立ち入った理論的アプローチや観測データはVolz (1954)の19節にある。

上記のエアロゾルは色の薄いヘイズから成り、従って日常生活ではほとんど気付くことはない。目に見える(あるいは場合によってはひどい)靄mist、霧fog、雲そして降ってくる雨粒はずっと大きい液体の水であり、同時に粒子サイズもずっと粗く、霧で約5μ〜20μ、雨滴で200μ〜200μ(2mm)である。こういった大きな液滴による光学現象はここで言うエアロゾルのそれとはまるで異なるものなので、20.3節で改めて扱う。大きなサイズのものについて一つ注意しておくと、霧に対する赤外線の透過力は可視光線のそれと大して変わらない。電波とレーダーだけが非常に透過力が良い(20.41節参照)。

減光についての議論の中で、我々は、真の減光係数が重要であり且つ測定可能である、と仮定することとする。ということは、周囲の散乱光と本体の光を区別して測定可能であるような理想的な点光源と光学装置が必要となる。Middleton (1949)は、このような条件は霧の中においた通常の遠隔測光装置では満たされることが無いことを示し、必要な補正を算出している。