火星で風力発電!?

担当している地学実験の、レポートが届く。ふむふむ。この実験では、ダストストームの動きを追跡することで現地の風速(のベクトル)を算出させるのが一つの目標だ。だが、一番の目的は『火星についてちょこっとぐらい蘊蓄を垂れられるぐらいにはなってほしい』なので、別に上記の風速算出でなくても、何でもいいから何か火星についてやってみろ、というスタンスである。そこで今回の彼のレポートを読むと、曰く、『‥‥僕は“火星の風”を知りたい、いや、感じたいのだ。』‥‥ほほぅ。

求めた風速は、‥‥初日8m/s、2日目1.7m/s、3日目5.5m/sだとか。ま、そんなもんだろう。平均値として、彼は5.087m/sを出した。有効数字はそこまでないだろうが、まぁここではそんなに細かいことは言わない。
しかし、ここからが彼の真骨頂であった。
彼は風力発電の効率(約60%)と、火星大気の密度(1.2e-2 [kg・m^-3])とを仮定し、そこから火星での風のパワーを算出する。風車の半径を、地球で実用化されている最大級のものとしてドイツの61.5mのものをサンプルに挙げていた。すると、期待される火星での風のパワーは、彼の計算によると、約93kwになる。そうすると、1年間での値にすると、50万kwhになる、のだそうだ。これは、彼によると、約400人分の電力需要に相当するのだそうだ。つまり1台これを設置すれば約400人が生活できる(少なくとも電気には困らない)、と結論づけている。

すばらしいレポートである。

もちろん彼が続けて『残る問題はhow to build itである』と言っている通りなのだが、しかしまた彼がその後に続けている〆の文句ががカッコイイ。

『長い戦いになりそうだが、決して未来は暗くはない。』