森林飽和―国土の変貌を考える(太田猛彦)
- 単行本(ソフトカバー): 260ページ
- 価格:¥1,188
- 出版社: NHK出版 (2012/7/26)
- ISBN-10: 414091193X
- ISBN-13: 978-4140911938
- 発売日: 2012/7/26
- おすすめ度:★★★★☆
NHK出版だし、アカデミックな薫り高い「読み物」かと思ったら大変な目に遭う。ほぼ学術書、専門書と言っていい緻密さ、濃厚さで、読むのに非常に集中力が必要。イメージとして全体を4つくらいに分けるとすると、2つめ辺り「中世日本の里山がいかに禿げ山だらけだったか」を資料に基づいてあれもこれも丹念に丹念に丹念に読み解いて行くのがどうにもまどろっこしく感じる。序論の海岸林の話も、書籍全体を読了すれば「ああ、マクラだったのだな」と思えるのだが、やっぱりまどろっこしい。逆に言えばそれだけ、最初に言ったように、緻密で学術的であるということだ。
主張としては、現在の日本は森林が失われてなんかおらず、むしろ過去に例をみないほどに森だらけであること。しかしその森は手入れがなされず人も入らないのでその意味で「荒れて」いること。そのために、そのエリア(を通る河川の流域)に対して新たな形で環境変動をもたらしていること‥‥ここで、著者は「悪化」とは言わないがそう考えているふしがちょくちょく見えるので僕としては残念だ。それはあくまでも人間にとっての評価だからだ。「現象」を「問題」ととらえると、自然科学ではなくなる。善悪の問題ではない。
終盤で、地質や気候も含めた「日本のまとめ」をしているのだが、これは非常にわかりやすく、かつコンパクトにまとまっていて、(ちょっとそれは言い過ぎ、と思われるところもあるけれど、おおまかには)大変良い。