コンビニでは、なぜ8月におでんを売り始めたのか(石川勝敏)

コンビニでは、なぜ8月におでんを売り始めたのか

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  • 石川 勝敏 (著)
  • 新書: 155ページ
  • 出版社: 扶桑社 (2007/8/30)
  • ISBN-10: 4594054668
  • ISBN-13: 978-4594054663
  • 発売日: 2007/8/30
  • 商品パッケージの寸法: 17.2 x 10.8 x 1.4 cm
  • おすすめ度:★☆☆☆☆


うーん…まぁ、マーケティングで成功してきた経験的法則集と思えばよいのかもしれない。「(気象要素が)こういう時はこうなるものである」という相関関係は正しいのだろう。本書の主軸は、消費行動の年間パターンは、四季で考えるのではなく、また気温そのものの高い低いで考えるのでもなく、気温が上がっている最中=「昇温期」なのか下がっている最中=「降温期」なのか、つまり「二季」である、という法則だ。繰り返しになるが、おそらく、その考え方で商売がうまくいく、というのは正しいのだろう。そして、そのような気象要素と生物の生理反応との関連を研究する分野を「生気象学」と呼び、本書はその生気象学的知見の紹介と、それを用いた(?)マーケティング戦略「ウェザーマーチャンダイジング」が目玉になっている。

しかし、消費行動の何かの現象と、それに関係(相関)がある(と思われる)別の現象や条件を述べる‥‥というところまでなら良いのだけど(そこで終わっていたら立派な疫学的研究だ)、問題は、その間を埋める理論を、あたかも生気象学なる学術的な裏付けがあるかのように書いているにも関わらず、よく読むとほとんどは「理論」になってないことだ。理論でなくとも、それをどうやって検証したらいいか考えればすぐわかるけど、アヤシイ話も多い。たとえば、

昇温期には軽い噛み応えのものが好まれ、降温期にはしっかりとした噛み応えのものがおいしく感じられます。

とかどうやって検証したのか。著者の好みではないのか。また、そもそも(生気象学の知見の本だと言っておきながら)気象と関係ない「理論」や知識もたくさん書かれている。人の味覚は甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つだけでなく「圧覚」「温度覚」の7覚だと考えればいいとか、なんだそりゃ? いやまぁ、そう考えると消費者行動が理解しやすいという仮想モデルってことなのかもしれないけどさ。っていうか「辛い」はどこいった!?

ある意味ではその辺りが疑似科学的で、非常に危険だ。

批判的な読書の練習台には、ちょうど良いかもしれない。経験則の部分については役に立つ知見はたくさんある(はずだ)から、もし読むなら、どれが信用できてどれがアヤシイか選り分けるつもりで読もう。

とにかく、生気象学が胡散臭いものであるかのような印象を持ってしまった。ホントのところはどうなのか、学問として信頼に足るものなのかどうか、少し気にしてみようと思う。