発信力の鍛え方 ―ソーシャルメディア活用術―(藤代裕之)

発信力の鍛え方 (PHPビジネス新書)

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  • 藤代裕之 (著)
  • 新書: 208ページ
  • 価格: ¥840
  • 出版社: PHP研究所 (2011/9/17)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4569794432
  • ISBN-13: 978-4569794433
  • 発売日: 2011/9/17
  • おすすめ度: ★★★★★

本書は、Twitterやブログ、mixiFacebookなどのSNS……本書では「ソーシャルメディア」……を、プライベートのみならずビジネスでも役立てられるような使い方をするためにはどうすればいいか、を主眼に書かれている。とは言うものの、別にビジネス上のセルフ・ブランディングのツールにしたい人だけでなく、ごくごく一般的な人が、ソーシャルメディア上の世界で、より「気持ちよく」過ごすための考え方やテクニック、作法が解説されている。さらに、ソーシャルメディア云々を離れた、ネットの外の世界での実生活上で役に立つ「ものの見方」や「伝え方」についても、ヒントが多い。

著者はWeb言論人の中では十指に入る、いや五指に入る有名人。有名なだけではなくすごい切れ者だなぁ、と僕は思っている。

僕はTwitterをやっている。職業柄、僕のTwitter上での発言は、こういう職種でない人よりも、やや信頼性が高い扱いになりやすいだろう。その意味では、Twitter参加者全員の「平均」よりは、「公人」の要素がやや高いのかもしれない。従って、発言に注意するべきである。それはわかっている。

だが、同業者で、いわゆる公式アカウント的な扱いでしかツイートしない方々を見ると、なんだかもったいないようにも思える。Facebookはそれでいいと思う。けれども、Twitterは違うと思うのだ。双方向の「友達契約」を結ぶ他のSNSと異なり、つながりかたが一方的だから、次々とフォロー/リムーブをするのが本来の使い方であると言える。だから、発信も一方的なものでも構わない。イヤならフォローしなけりゃいいのだから。しかし、そうであるにも関わらず、他のSNSとは何かしら異なる、双方向性のやり取りの「コミュニティ」が自然発生する。

友人がとても的確な表現をしていた:「Twitterは、人々の息づかいが聴こえる」…僕も、Twitterの場合、意味のあることだけを発信しなければならないわけじゃないと思う。くだらないことだって構わない。何かぶつくさ言ってるのが、雑然とタイムライン上に並んでいるのを眺めていると、その向こう側に、人々が透けて見えて来るような錯覚に陥ることがある。そして、そのどうでもいいツイートの大半に意味はなくとも、なんとなく意味のあるものが出て来て、そこにふわーっと人々が乗っかって行くのが面白いところ、あるいはTwitterの真骨頂とさえ思える。しかし、そう思っている人は、おそらく少数派だろう(何も考えていないのが大多数でもあろうが…)

だからこそ、発信力を鍛えておかなければ、足元をすくわれることになる。学生達の多くが「だべり場」としてTwitterを使っているけれど、あれは、なんというか、そうじゃないんだよ、という感じがしている。本名を隠しているから大丈夫、というのは甘いのだ。じゃあ翻って自分はどうなのかというと…あはは(^^;

そこらへんのバランス感覚のようなものを感じ取りたくて、本書を手に取った。

この点で、ぴったりの話をしているところがあるので引用してみよう:

ソーシャルメディアは、基本的にはオープンなものです。(中略)たとえば、「腹が減った」というツイートに対して、それを見た別の会社の人から「ちょうど僕もお昼に行くところだったんです」「行きましょう」などと誘われる、そんな素敵なことが起こることもあります。でもそれは大勢の人がいる都会の駅やショッピングモールで「お腹が減った」とか「一緒にご飯を食べませんか」とか言っているのと同じことだというのを忘れないようにして下さい。自分では、ある特定の友達とか、ある特定のグループに投げているつもりでも、まわりの人もちゃんと聞いているということです。

もう一つ、若い人々がやりがちなこと。それは、他人が写った写真をUPすること。本書でも気をつけるべきこととして扱われている。僕からすれば、はっきり言ってこれはマナー違反、厳禁と言っていい。大学生がやっちゃった場合、これは一緒に楽しく写った友人を苦しめる結果を招く。例えば、飲み会の写真は、いくら楽しい想い出の一コマだったとしても、ネットにUPしてはいけないと思っておいたほうがいい。一所懸命にエントリーシートを書き、面接でもめいっぱいアピールした就職第一志望の人事担当者は、必ずその人を検索する。その時、本人のアカウントは見られて良くても、友達がUPした写真で、本人がハメを外しているところがバレるわけだ。いくらTwitterで実名を隠していても、友達は嬉々としておもしろ写真の中のその人にタグ付けしてFacebookで大公開してくれる。

誰かが写った写真をUPしたければ、そしてタグ付けしたければ、必ず本人の承諾を得よう。

本書では、他にも、そもそも情報をどのように見つけてくるのか、どのように表現するのか、トラブルにはどう対処するのか、といった様々なテクニックや考え方が紹介されている。しかもそれらが非常に読みやすくスマートに書かれているので、スッと読める(ある意味では、あまりにスッと読めてしまうので、重要なポイントを見逃してしまいそうなぐらいである)。僕にとっては割と以前から経験的にも学んでいることが多かったので、新規に得られたことはそんなに多くないような気もしなくもないが、おそらく、ゼミ生にはピッタリの本だと思うので勧めたい。ゼミ生がもし読んでくれたら、僕がゼミ生に「ブログ書け」と言っている理由も、少しはわかってもらえるかもしれない。