「教養」とは何か(阿部謹也)

「教養」とは何か (講談社現代新書)

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  • 阿部 謹也 (著)
  • 新書: 186ページ
  • 出版社: 講談社 (1997/5/20)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4061493582
  • ISBN-13: 978-4061493582
  • 発売日: 1997/5/20
  • おすすめ度: ★★☆☆☆


予想通り、スッキリしない本だった。

これは担当教員チームの末席を汚している教養ゼミでの、課題図書である。担当教員として読まねばならない。(だから、立場上、おすすめ度を★ひとつにするわけにはいかないというアレ)

タイトルは「教養とは何か」だけれども、あくまでも「世間」というものについて論考している本である。というか、この著者は「世間」論で知られている御仁らしい。某有名私立大学の学長さんなんだとか。タイトルから想像されるように、「教養とは何か!」と熱く(?)考えを掘り下げて行くのかと思えば、あっけないほど簡単に教養を定義してみせる。「え!?そんな軽いノリでいいの?」その意味で、拍子抜けだった。

要するに、本書は、著者の研究テーマの一つである「世間」について語り倒している本なのである。著者は、そうやって「世間」という存在を顕在化させ、意識的に見ることができることの重要性を語りたくて、その道具として、あるいは話題として、「教養」というものを、その「世間」論の中に位置づけてみた……「教養」について考えようという動機を持ちながら本書を読んだ僕にはそう見える。

だから、「そういう説明もできるだろうが、そうである必然性は無いよ?」っていう、ね。

全く別の観点からひとこと。本書の前半は、その「世間」について、西欧の中世の社会の変化を紹介しつつ語っている。中世文化論とでも言うのだろうか? 僕は歴史が全くダメだということは、このWeb日記でも何度も白状してきたけど、このように、あるテーマで切り取った、あるいは編集された「歴史語り」は、興味深く読める。基本的な年表が頭に入っていればより楽しめそうだなぁ、と残念に思った。むしろ、こういう「歴史語り」のほうが頭に入りやすいので、こういうところから「基本的な年表」を頭に入れていければいいなぁ、とも思った。