フリー 〜〈無料〉からお金を生みだす新戦略(クリス・アンダーソン)
- 著者: クリス・アンダーソン (著), 小林弘人 (監修), 高橋則明 (翻訳)
- ハードカバー: 352ページ
- 出版社: 日本放送出版協会 (2009/11/21)
- ISBN-10: 4140814047
- ISBN-13: 978-4140814048
- 発売日: 2009/11/21
- おすすめ度: ★★★★★
2009年に出版されたビジネス書の中で最も注目された本ではないだろうか。あの「ロングテール」の名付け親が放った話題作である。実は本書の書評はとっくの昔にアップしていたつもりだったのだが、どうやら忘れていたらしい(^^; ということで、今更な感があるが、アップしておく。
要するに、「どうしてネット上では無料のものばっかりなのか」をマジメに考えた本である。ここで言う無料(フリー)は、リアル・ワールドでよくある「1つ買ったら2つ目はタダ」というモデルではなく(これは半額になっただけだ)、「本当にタダ」なのである。以下に僕の理解をまとめてみる。
- デジタル化によって、知的価値の占める割合の高いものほど、生成(特に複製)に必要な費用が劇的に低下
- 複製の費用が無視できるレベルになると、希少性による価値を失う(コモディティ化)
- しかし価格はつけられなくても価値は存在する(商社に行かなくなったお金は家計を潤し、品物による社会全体の価値の増大はそのままにGDPを上げる)
または、
- <解2>
- その品物のやりとりをタダで行うことによって得られる評判・注目を「通貨」とする贈与経済モデル
評判・注目を如何に換金するか?が鍵になる。例えば、「コラムニストはタダで記事をネット配信するが、講演料は高い」など。
「インディーズ・ミュージシャンがタダで自作を公表するとライブで集客できる」「電子版の書籍を無料で先行配信すると紙版の売上が増大する(※この本が採用した戦略)」などは、上記2つのハイブリッドかもしれない。
常識的な感覚として、一般大衆は安い方に向かう。だから、「効率化」が実現するたびに世のモノの値段が下がるのは大きな流れだろう。デジタル革命によってこの流れが一気に加速したわけで、ネットではその顕著な例が見られるだけで、リアル・ワールドでも着実にその流れは不可避的に進行しているように思う。正確には、価格の上がるものと下がるものがはっきりしてきた、とも言える。その流れを的確に読まなければ、近い将来のビジネスは成り立たない(既得権益がでかくて流れについていけない企業の代表が、マスメディアや、音楽産業などの著作権ビジネス産業だろう)。もちろん、うちの職場の関心事である「観光」「地域活性化」も然り、であろう。 その意味で‥‥内容の割にこのページ数は明らかに多過ぎで心が折れそうになるが‥‥読んでおかないと損をする本だろう。少なくとも、「経営学も勉強した」はずのうちの学生が「フリーミアム」という言葉を知らないのは、恥ずかしい。