枯れ草は黄砂発生にどう影響するか?: 日蒙米協働プロジェクトDUVEX, 篠田, JGL, Vol.6, No.1, 5-7, 2010
Introduction
黄砂と臨界風速
- 黄砂が日本に飛来するまでの過程は、発生、輸送、沈着に大別される
- チームはゴビ砂漠の北、Bayan Unjuulにて集中的にあれこれ調査・観測
- モンゴルに於いて春の黄砂発生に関わる要因は、冬の積雪・土壌凍結、春の土壌水分・枯れ草、大規模な気象など
- 家畜による採食の影響も要考慮
- 過度の放牧は草原の劣化(砂漠化)を引き起こし、黄砂発生を誘発
- 黄砂の発生しやすさ=黄砂が舞い上がり始める「臨界風速」で指標化
- 臨界風速大=強い風が吹いてやっと舞い上がる
- 臨界風速小=少しの風でも舞い上がる
- 臨界風速は春に極小
- 春に大きく変化する地表面状態が重要
観測は2008年春
- 地表面は、主に枯れ草による植被率がわずか7.2%だったにも関わらず、臨界風速は11.9m/sとゴビ砂漠の裸地のこれまでの観測例よりも大きかった(黄砂が舞い上がりにくかった)
- 研究総括
- 植被が約20%以下の砂漠から草原にかけての地域でのみ、植生変動が黄砂発生に影響
- 植被がそれ以上となる地域では黄砂はほとんど発生しない
気候メモリ
- 気候メモリとは「大気の物理量(気温、水蒸気量、降水量等)における季節変化成分あるいは経年変化成分の偏差を、その発生以降、引き継ぎ、保持する地球表層における大気以外のサブシステムの働き」
- キーになるのは前年の夏の残渣である枯れ草、冬の間凍結していた土壌水分、融雪水(モンゴル平均で数cmの積雪深)
- 枯れ草の影響
- 前年に雨が多い→春に草が多くなる→臨界風速大
- 種の変動
- 通常、多年生のイネ科は干ばつなどの擾乱に対して安定性大
- 草原生態系を縁の下で支えている
- 降水量増加→非嗜好性の一年生双子葉植物が優勢、残渣も多くなる=植物種は採食という過程を経て残渣の量に影響し、最終的には黄砂発生に影響する
- 「非嗜好性」=家畜が好んでは採食しない