NEWS: Survey Highlights Search for Habitable Extrasolar Planets, Eos, Vol. 91, No. 34, 24 August 2010

近いところにある、我々の太陽系の外のハビタブルプラネットを探す。これは、2010年8月13日にリリースされた the U.S. decadal survey of astronomy and astrophysics for 2012-2021(※オレ訳だと「アメリカの天文・宇宙物理学10年計画・2012-2021版」)によって選ばれた3つの優先科学目標の1つである*1。他の目標は、米国学術研究会議(U.S. National Research Council, NRC)の報告書"New Worlds, New Horizons in Astronomy and Astrophysics"にまとめられているが、宇宙最初期の星々・銀河・ブラックホールの探索と、宇宙の基礎物理過程の理解の発展(ダークエネルギーの諸特性の決定を含む)である。


系外惑星の探索は、天文学のあらゆる分野で最もエキサイティングなテーマであり、また、この報告書が書かれていた時でさえ大きな新しい成果が出てきたぐらい、最もダイナミックなものの1つである」1990年代始めに系外惑星が初めて発見されて以降、検出技術は発展し続け、発見された系外惑星の数は現在知られているだけで約500個まで増えている。

「このサーベイは、他の恒星の周りに形成される惑星系の多様性や特性を探るプログラムや、近傍のハビタブルプラネットを発見し調査するという長期的なゴールに備えるためのプログラムを推奨している」と報告書は述べている。「地球に似た、あるいは地球型惑星の『国勢調査』を作ることは、我々の家とも言えるこの地球上の世界はありふれたものなのか、それとも惑星形成ではめったにない結果なのか、それを決定するために不可欠な最初の1歩である。
報告書がスペースミッションの最優先事項として推薦しているのが、1.5m広視野近赤外低分散分光撮像望遠鏡である、16億ドルのWide Field Infrared Survey Telescope (WFIRST)である。この望遠鏡は、宇宙進化に対するダークエネルギーの影響を決定するのに役立つだけでなく、系外惑星発見にも役立つ。トップにランキングされた中型宇宙機プロジェクトはNew Worlds Technology Development Programである。これは報告書が、NASAに対し、「将来の宇宙からの撮像や分光のミッションのための技術・科学用基金を設立するために」初めに年間400万ドルの投資をするよう推薦しているものだ。

委員会に参加する天文学者の数人が、ハビタブルプラネット探索は重要かつタイムリーなトピックであることを強調していた。

「ハビタブルプラネット探し、これは暗に地球外生命の探査も含んでいると期待されているわけだが、これは人類が行う深遠な活動と言える。これがこの先10年の間に達成できるかもしれないという事実——こんなゴールがあのリストの上位に設定されていることは当然で驚くに値しないはずだ」とNRCの「天文・宇宙物理学10年計画」委員会のメンバーであるNeil deGrasse Tysonは8月13日のブリーフィングで述べた。TysonはHayden Planetarium at the American Museum of Natural History in New Yorkのdirectorであるが、彼は 「現在の系外惑星探査は、我々が利用可能なテクノロジーのもたらすものの中で、我々が優先順位リストの中で設定したまさにその位置に属している、と我々は信じている」と述べた。

NRC委員会役員のLynne HillenbrandはEosの取材に対し、系外惑星探索と進展につながるようなプログラムを持っておく必要性については、天文学コミュニティ内では意見の不一致は殆どない、と語った。Hillenbrandeはカリフォルニア工科大学天文学部の教授だが、WFIRSTとNew Worlds Technology Development Programの両方ともが将来の宇宙ミッションを支持していると述べた。*2彼女は特に、潜在的ハビタブルプラネットについて詳細に研究する将来ミッションに先立って、科学的かつ技術的な進歩がなされなければならないと述べた。「私達は、この仕事を、この先10年間の中頃までに(1)この宇宙ミッションをどのように行えばよいかわかるようにより知識を貯え(2)『来たる10年計画』によって提起された考慮すべき事柄を扱う準備ができるように、行うことを推奨しています。」

NRC委員のJonathan LunineはEosの取材に対し、「この分野は、疑いなく、来たる20年間程度ずっと継続して発見が続くであろうほどに成熟していて、それまでのどこかで、太陽に似た恒星の周りを巡る地球程度のサイズの惑星の大気組成の最初の分析が行われる可能性もある。」と語った。LunineはイタリアのRome Tor Vergata大学物理学科の教授であるが、アリゾナ大学から休暇をもらっている*3。彼は「そのことは最近20年間の非常に大きな進歩と科学的に約束されたことであり、従って、報告書(the survey)の中で得に強調するに値する。」と付け加えた。

Lunineは、連邦政府の予算上の制約が、レポート内の優先順位を決めるキーファクターだったと述べた。彼は、「我々はリアリスティックであらねばならず、そして少なくとも上位2つの目標を1つのミッションに入れてしまわねばならなかった。WFIRSTは単一のミッションで宇宙論系外惑星分野における最上位の新しいサイエンスを供給するだろう。その両者は地上観測と将来の技術革新プログラムで補完されるだろう。だから、WFIRSTが系外惑星研究もついでで行う宇宙論ミッションでないことを理解しておくことは非常に重要である。WFIRSTの目的は、遠方の超新星までの距離を測定し、弱いレンズ効果を測定し、ダークエネルギーを理解するためにバリオンの音波振動を測定し、ハビタブルゾーンにある地球型惑星やsub-Earthsを含む惑星系アーキテクチャーについての全銀河を対象とした統計を得るために重力マイクロレンズ効果を測定すること、である」と説明した。
彼は、「これらのゴールは優先順位の順にはなっていない。これらは同等なのだ。故に、我々の最優先スペースミッションであるWFIRSTは宇宙論系外惑星研究をその同等な第1目標として含んでいる」と述べた。
アメリ天文学学会(AAS)役員のKevin Marvelは、Eosの取材に対し、「地球外での生命の発見——我々が知っている通りの生命であっても、我々が知らないような生命であっても、あるいは予想もできないような生命であっても——がなされたとすれば、それは史上最高に重要な発見の1つであるだろうし、また天文学の中だけで最も重要だというわけではなく、人類にとって最も重要であるだろう。これが、新たな世界、特に生命を宿すような世界を見つけ同定するようなミッションのための例のサイエンスの件が報告書のトップに上がってきた第1の理由だ。僕の考えではね。」と語った。
AASは報告書を承認し、報告書が「来たる10年間に対し推薦されるべきエキサイティング且つリアリスティックなことがらを示している」とする声明を出した。Marvelはそれに加えて、アメリ連邦議会ホワイトハウス、連邦資金を拠出する部局(?...federal funding agencies)は、連邦のリソースを天文学・宇宙物理学プロジェクトに割り当てるために我々のコミュニティの優先順位を使うだろう」と述べた。
このレポートは、宇宙開発や地上ベースの研究の優先順位も多く載せているが、数百人の天文学者や宇宙物理学者を巻き込んで作られたものだ。このような報告書としては第6番目のものであり、技術的なレディネス、スケジュール、コストの面でのリスクを含む諸般のファクターを考慮に入れたものとしては初めてのものだ。詳しくはhttp://sites.nationalacademies.org/bpa/BPA_049810 を参照のこと。

——Randy Showstack, staff writer

*1:surveyには「調査書」の意味がある。

*2:in support of ...|…を支持して

*3:on leave|休暇(中)で.