「熱帯気象のマルチスケール相互作用」, 高藪, JGL, Vol. 4, No. 4, 2008

これは全編が重要なレジメになっている。なので要約は無理なので、本編とは直接無関係に「覚えておきたいこと」をメモ。

Madden-Julian Oscillation: MJO

  • 熱帯域で最大の水平サイズを持つ雲システム
  • 赤道息で雲クラスターがさらに数千kmの群れを作り、地球規模の東西循環を伴いながら東進する現象
  • 30〜90日程度の周期性を持つ(∴季節内変動とも呼ばれる)
  • 基本形:西側にロスビー波由来、東側にケルビン波由来の準定常的な応答構造を伴う

MJOとエルニーニョ

  • ロスビー波由来の西半分に、赤道をはさんだ「双子低気圧」が形成されると、赤道上に数日間持続する強い「西風バースト」をもたらすことがある。
    • これが太平洋赤道上で東向きの吹送流を作り、エルニーニョ(の開始、発達)を促進する。
  • 東側のケルビン波由来の部分が卓越するMJOの場合、その東風による西向きの吹送流がエルニーニョの急な終息を生み出す
    • 20世紀最後の四半世紀で最大の1997/98年エルニーニョが終息を迎えたとき、この吹送流により、海面表層直下に「用意されていた」冷水がどばっと出てきて、5月の一ヶ月間で東太平洋海面水温が約9℃も一気に降下した

エルニーニョと台風

  • 台風の多くが3〜5日周期の偏東風波動擾乱から発生する
    • 偏東風波動擾乱は、通常の夏季には日付変更線付近で混合ロスビー重力波となっている
    • この擾乱は偏東風に乗って西進して西太平洋にくると熱帯低気圧型擾乱(渦)になり、台風の卵になる
  • 温水が東に広がるエルニーニョ時には、より東まで熱帯低気圧型擾乱が発生する→台風の発生は通常より東にずれる(ラニーニャの時は逆)