地球科学と国連海洋法条約大陸棚問題, 玉木, JGL, Vol., 4, No. 1, 2008

各国のいわゆる「200海里」の水域を決定するために、各国が地球科学的根拠を国連に提出する期日が、まもなく(2009年5月)である!

日本を含む20カ国あまりが国連に大陸棚延伸を申請すると予想される。

排他的経済水域(Exclusive Economic Zone: EEZ

いわゆる「200海里経済水域」のこと。これを決定するためには、国連海洋法条約で定義される、法律用語としての「大陸棚」がどこまでなのか、ということに依存する。
というのも、「海岸線から200海里」だけではなく、「自国の大陸棚がでかければ、それ相応に自国のテリトリーを広げていいよ」というルールがあるからだ。
で、この「大陸棚」ってどうやって決めるんですか?というのが問題になるが、これは条約第76条に書いてあるものの、(頑張っているが)まだ任意性のある部分が多く、その結果、各国の思惑が交錯することになる。
ちなみにこの条約上の「大陸棚」は、地球科学で言う「大陸棚」とは関係ない。

大陸棚

  • 「大陸斜面麓から60海里」または「大陸斜面がだらーんとなって勾配がある値になったところ」、というのが基本。
  • でもいくらでもとれるところもあるので「いくらなんでも沿岸から350海里まで」などの縛りがある。
  • でも海嶺があったり、「大陸辺縁部の自然の構成要素である海底の高まり」があったりすると、例外が適用されてややこしくなる。

飛び交う主張の例

  • そもそも大陸斜面とは何か?
    • 「日本列島のような島弧は大陸ではないので、大陸斜面は無く、従って大陸棚延伸もあり得ない」(←極論、ではある)
  • 「大陸辺縁部の自然の構成要素である海底の高まり」とは何か?(←解釈によっては、沖合いへ浅い海底が延びるところでは、いくらでも延伸できることになる)
    • 「大陸地殻で構成されなければならない」
    • 「いや自国がホットスポットでできた海洋島であれば、大陸地殻である必要はない」
    • 「自国と同じホットスポットでできた「高まり」であることを証明するために、海底岩石の同位体組成を検証すべきだ」

関連情報

  • 北極海
    • 温暖化に伴い、夏期の北極海の海氷が今世紀中に完全融解することが複数の研究により予測されている
    • それに伴って、北極海航路の開発、海底資源開発が注目されている
  • 南極大陸
    • 南極条約「南極における領土主権を凍結する」を批准していない国がいがみ合っている
      • アルゼンチン、イギリス、オーストラリア、チリなど7ヶ国。