『地球温暖化と気候変化の予測〜IPCC第4次報告〜』, 松野, JGL, Vol. 3, No. 2, 2007

IPCC第4次報告についてのまとめ論文。

  • 地球全体の平均気温は、過去100年間に0.74℃上昇した
  • 海洋も同時に温暖化している
  • 海水準上昇は過去100年で17cm
  • この30年ほどで、北極海の海氷面積、北半球大陸上の積雪面積は、ともに8%減少
A大のF川氏も言ってたけど、「温暖化だ温暖化だ」って言ってるけどどんだけ暑くなった?って学生に聞いてみよう。1℃より小さいって答えられるのはどれだけいるかなぁ。

このまとめ論文での注目点は以下のパート。太陽光変動起因説に対する痛烈な反論である。


 まず、温室効果ガスの濃度は、直接の観測によって精度よく測られている。それらが大気中にあった場合、赤外線の流出を妨げ地球を温める効果、つまり温室効果をもたらすが、その大きさ(放射強制力と呼ぶ)は分子の赤外分光データと放射伝達方程式によって間違いなく求めることができる。それを産業革命前の自然状態の濃度での値と比較して差を取ると約2.6W/m2で、平均日射の1%を超える大きさになっている。不思議なことに、太陽活動論者でこの計算に間違いがあると指摘したのを聞いたことがない。

 一方、人工衛星により1979年以降測られている日射強度は、黒点数の約10年周期の増減に応じた変動を示し、最大と最小の差は0.1%程である。しかし、一方的な増加トレンドは見当たらない。あったとしても0.01%のオーダーであろう。同じ期間に、温室効果の強まりは平均日射の約0.4%にも達した。そしてこれに相当する地表温度の上昇量を計算してみると、実際の観測と合っている。このようなわけで、最近20年余りの温暖化は温室効果ガス増加によるものであり、太陽光の変化は無視できることは明らかである。

前段は、要するに、「二酸化炭素の増加による温室効果の増大は有意な大きさがある」ということを言っている。おそらく、「たったそんだけの増加量で効果あるわけないじゃん」っていう人への反論なのだろう。後段は、「太陽活動の周期変動に伴って太陽光エネルギーが変わってることが、温暖化の原因だ」とする説への反論になっている。前段と同様に温室効果の度合いの変化をここ25年ほどについて計算し、同じ期間で太陽光エネルギーの実測値の変化と比べたら、後者のほうが地表温の変動とぴったりだよ、ということ。

Svensmarkや丸山さんの、「太陽活動の変化によってプラズマ環境が変わり、それによって雲分布が変わる」という説の反論にはなってない。


人間の生活や産業は機構が変わらないことを前提に成り立っている。北極航路のように温暖化のプラス効果もあるが全体としては機構の急激な変化がマイナスの影響をもたらすであろうことは容易に想像できよう。‥‥
確かに、現時点ではそういうふうに見えるけれども、人類が対応できないような変化なのだろうか?そもそも温暖化したら本当にマイナスなのか?温暖化したっていいんじゃないの?ということを問う、という観点は、忘れてはいけないような気がする。