すさみ町紀行:1日目

先日、「学生を現地に送り込む企画」に随行するスタッフとして出張してきた。その1日目の記録。

この企画、「現地」によってトーンが全く違うのだが、オレの担当することになったこの和歌山県すさみ町の場合、ほとんど「観光旅行」である。実際にすさみ町の魅力的ポイントや過疎地域などを巡り、意見や感想を(学生が)フィードバックする(のを手伝う)のがオレに課せられたミッションである。

いろいろあったが、結局、きっぷを取ってなかったので、所定の電車(オーシャンアロー5号)を新大阪で捕まえることに。7:45に自宅を出て、新大阪についてJRみどりの窓口に飛び込む。何とか指定席を確保できた。危なかった(実際、和歌山駅を出る頃にはほぼ満席であった)。この駅が、まともにオンラインで仕事ができる最後のチャンス、ということで、最重要のメールを送る。

周参見駅に到着すると、役場の担当のI氏が出迎えてくれた。この人、本当にいい人である。
すさみ八景の一つ、恋人岬から見晴らす風景は、特に陸(おか)の黒島を回り込む波がぶつかる「合掌波」がなんとも科学的で不思議であった。科学的「で」不思議、という感覚はうまく説明できないのだが、‥‥要するに起こっていることは波の「回折」と、それで発生した2次波が正面から出会って互いをすり抜けて行きつつ干渉縞っぽいものを作ってるわけで、要は高校の物理で習うやつが現実にそこで見えているのだ。それが分かっていて見ると、なんというか、何とも言えない不思議な感覚になってくる。誰にもわかってもらえないことは確実なので胸の内にしまっておきながらの昼食。天ぷらうどん定食、ではなくて「天ぷらとうどん定食」を食す。

昼食後、「エビとカニの水族館」に行く。ここがなんとなんと、予想外にアツいところであった。テーマを絞る、特化するということがこんなにもコンテンツを魅力的にするのか!という良い例だと思った。さびれてしまって使われなくなっていた施設の建物を改修したという、非常にこぢんまりとしたスペースに、エビとカニが展示されている。別に甲殻類マニアでなくても充分に楽しめる。でかい水族館も良いのだが、あれもこれもたくさんあって、あまり記憶に残らないものだが、こちらは一つ一つが何と言うか「キャラが立っている」のである。ちなみにここは「日本童謡の園」でもある(いずれも県立江住海岸公園の一部らしい)のだが、この童謡のモニュメントの一つに「まりと殿様」というのがあって、その歌が流れている。この歌がとんでもなく難度の高い歌で、「ちょwwwこれ童謡かよwww」と驚いた。

続いて渡船。磯釣りスポットとして有名なすさみ町の荒磯を見学。磯に上がるわけではなく、定時巡回する渡船に便乗させてもらって、中で解説を聞く。久しぶりの渡船に、小さい頃、亡父とよく行った武庫川堤防での釣りの記憶を呼び起こされた。

その後、日曜なのにわざわざ開けてもらって町役場でミーティーング。商工会の会長さんや役場の課長さんを迎えて、お話を聞く。いろいろと勉強になる。役場の人々がよく働いていることと、それが商工会などとの連携の面で実際に奏功していることを再確認。土日返上当たり前。小さい自治体ならではの良さ、かもしれない。町おこしが成功し規模が大きくなってもそれが維持できるかどうかが心配ではある。それにしても、ディスカッションの場では、今日は一日どうも、というかいつもそうなのだが、どうもオレは空気読めない。地味に凹む。役場から出ると、ちょうど5時となって、町内放送でチャイムが鳴り、「5時です、外で遊んでいる良い子はおうちに帰りましょう」とのこと。平和過ぎてなんだか幸せな気分になった。

盛りだくさんの見学etc.の後は民宿に帰投。ここにきて初めて、携帯が使えないことに気付く。AUが使える場所は町内では極めて限られているようだ。ここではDoCoMoが消去法的にメジャーなキャリアであるらしい。晩飯はイノブタ鍋を食す。豚肉のようで豚肉でない。脂身たっぷりなのにあっさりして美味。ちなみに買い出しでは酒は我慢。仕事仕事、である。