マスコミはなぜ「マスゴミ」と呼ばれるのか―権力に縛られたメディアのシステムを俯瞰する(日隅一雄)


マスコミはなぜ「マスゴミ」と呼ばれるのか―権力に縛られたメディアのシステムを俯瞰する



  • 作者: 日隅一雄
  • 出版社/メーカー: 現代人文社
  • 定価: 1,890
  • Amazon 価格: 1,890 円 (2008年06月22日 22時15分 時点)
  • 発売日: 2008/04/25
  • メディア: 単行本
  • ISBN: 9784877983710



マスコミ嫌いのネットユーザこそ、本書を読もう。どうでもいいマスゴミを知るためではなく、「今、ネットに政府の魔の手が迫っている!」ということを知るために、だ。

本書は、副題『権力に縛られたメディアのシステムを俯瞰する』とあるように、いかにマスコミがいわゆる「権力」による影響を受け、構造的に腐敗しているかを暴く。その上で、『このままではインターネットメディアにも異常な規制が課せられる可能性が大きいことを指摘した。日本独自のマスメディア規制を許したままだと、日本独自のインターネットメディア規制を阻止できないかもしれない。(あとがき)』とする。
大きな誤りがひとつある以外は、おおむね、言ってることは正しいと思う。マスコミはもうどうしようもないので、せめてネットだけは、という気にもなるし、正直、ネットに対する規制の実際の検討案がここまで危険な状態だとは予想していなかっただけに衝撃だ。民主党嫌いを公言しているオレでも、独立規制委員会案を通すと言うなら民主党を応援しようかという気になる(笑)

マスゴミ」という単語自体は、ネット上では、もう「使い古された」と言ってもいいぐらいのことばである。だから、ネットユーザの皆さんにとっては、この本書のタイトルを見ても「何を今さら」というところであろう。実際、本書で書かれている事柄は、本書のタイトル「マスコミはなぜマスゴミと呼ばれるのか」という理由には全然なっていない(そのことについては項を改めてこの続きに書くことにする)。それが上述の「大きな誤りがひとつ」ということなのだが、ひょっとすると、むしろ、「ネットユーザがマスコミをマスゴミと呼ぶ理由など、現実のマスコミのゴミっぷりに比べれば大したことではなかったのだ」と、ネットユーザにこそ驚きをもって迎えられるかもしれない(脱線するが本書の著者のスタンスはネットユーザからすればゴミの部類である‥‥参考:著者のブログ「情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)」)。それほどまでにマスコミは「構造的に」腐っているということを本書はくどいぐらいに事例を並べ立てて主張し、その延長で、「政府のマスコミへの影響力を行使するための構造」がネットへも持ち込まれようとしていることを暴く。終盤で述べられる、諮問機関の答申には、正直、驚きを禁じえない。何のための学識経験者か。
ともかく、本書をちらっと見ただけではネットユーザは敬遠しそうであるが、上述したように、ネットユーザだからこそ知っておくべき警告がここにある。タイムリミットは2010年だそうだ。