van de Hulst, "Light Scattering by Small Particles", §2.6

2.6 多数の粒子から成る雲による散乱と減光
多数の粒子を含み、光学的に薄い雲を考える。これは、雲内の各粒子への入射光は全て等しくI0である、ということを意味する(1.22節参照)。このとき、各粒子について次の式が成り立つ。

Ii = ‥‥

iは粒子の番号である。粒子はそれぞれ同じようなものである必要は無い。iについて総和をとると、2.1節の最初の式と同様な式が雲全体に付いて成り立つことが分かる。

F(θ,φ) = Σ Fi(θ,φ)
※註:本文ではΣの下にiがある】この和は、位相の効果は無視できるという仮定に基づいている(1.22節参照)。

このF(θ,φ)で特徴づけられる同質な粒子を単位体積当たりN個含む体積要素Vを媒質中に考え、この式を適用してみよう。そうすると、この体積要素中の粒子数はNVだから、距離rに於ける散乱光強度は
I = ....
で与えられる。この方向へVを射影したときの面積をAとすると、この放射は立体角A/r²に入っているから、散乱光による平均輝度(放射輝度 radiance)は
B = ....
となる。明るさの単位について言えば、I0は照度 illuminanceである。Bは輝度 luminance であり、単位は[lumen/steradian]もしくは[candle/m²]である。

これらの結果に関しては、様々なバリエーションが可能である。例えば、偏光を含んで考える場合、総和の式は16個の要素Fikそれぞれについて別々に成り立つことが挙げられる。

断面積C_ext、C_sca、C_absについても同様な和の公式が成り立つ。これはかなり当然の仮定のように見えるが、背後に隠された物理については4.22節と4.3節で解説する。

非常に良く使う応用例の一つは、同一成分だがサイズの異なる球形粒子集団の雲による減光である。ここで、減光効率 Qext(a) と減光断面積 Cext(a) = πa²Qext(a) を半径aの関数である。半径がa〜a+daの範囲に入っている粒子の1cm³当たりの個数をN(a)daとすると、∫ N(a)da = N 【※註:本文では∫の積分範囲は0から∞まで】は1cm³当たりの全粒子数になる。媒質の減光係数は1cm³当たりの断面積の合計に等しく、

γ = ∫...

となる。積分変数aは、変数x=2πa/λに変換した方が望ましい場合が多々ある。