Bell et al., 1996 on JGR

Detection and monitoring of H2O and CO2 ice clouds on Mars
J. Bell III, W. Calvin, M. Ockert-Bell, D. Crisp, J. Pollack, J. Spencer,
J. Geophys. Res., vol, 101, No. E4, 9227-9237, 1996
近赤外の地上観測によって、火星のH2Oの雲とCO2の雲を捕捉・識別する観測スキームを開発した。1990年と1993年の近赤外イメージの解析結果を報告する。実験室でのH2O iceとCO2 iceの先行研究から、雲の捕捉可能性と組成の識別可能性が最も高い特定の波長に着目した。これらの波長のいくつかについて、南北両極域で吸収線を見つけ、マッピングした。これらの吸収線を作る組成に関する情報は、実験室での氷のスペクトルとの比較およびCO2 iceの雲が明るい地表面に乗っかっている単純化した放射伝達モデルとの比較により得られた。その結果、両極雲の内部に、H2O iceの雲とCO2 iceの雲の両方が捕捉・識別できた。3.00μm付近が最もH2O iceの雲を捕捉するのに都合が良い。なぜならここにはH2O iceの強い吸収があるのに対しCO2 iceは弱いバンドがあるだけだからである。3.33μm付近はCO2のの捕捉に最も便利である。なぜならこの波長では強く比較的狭いCO2 iceのバンドと広くて「continuumの」H2O iceの吸収があるだけだからだ。粗い粒径のCO2 iceに由来するか、もしくは地表面/ダストの鉱物に由来する弱いfeaturesが2.30μm付近にあった。2.00μm付近の狭いfeaturesは、診断的にはCO2 ice の雲だと思われるが、火星大気のCO2コンタミがあり、高緯度での地表面高度分布がイマイチ分からないので、解釈が困難である。これらの結果は、将来の、より長い期間にわたる四季のサイクルをカバーする地上観測、地球周回軌道からの観測、そして探査機による観測が、極域の熱収支に対するCO2凝結の果たす役割をより詳細に理解することを可能にするばかりでなく、火星における揮発物質の輸送の様式・タイミングに関する相当な情報を与えるはずである、ということを示している。