ハンバーガーの教訓 ― 消費者の欲求を考える意味(原田泳幸)


ハンバーガーの教訓―消費者の欲求を考える意味 (角川oneテーマ21 C 142)

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オレが長男の名前を考えたときに思い描いていたことは、儒教で言う『五常の徳』=仁義礼智信を兼ね備えた人物になってほしいということだった。だが、だからといって名前が『仁義礼智信』というのも困る。何とか1字でそれを表せないか?ということで「ゆずれない1字」として名付け会議で早くから主張していたのが『将』という字であった。オレが感銘を受けた孫子は「将とは、智・信・仁・勇・厳なり」と言ってるのだが、戦いを前提としない場合のリーダーとしては、まず五常の徳を備えた人物に『将』になって頂きたいものだとよく思う。その上での「+勇」「+厳」であってほしい。
しかしそんな『将』は時代遅れであるようだ。少なくとも経営者たる者、若い頃の苦労や下々の者どもの考えなどに関わっていてはいけない。そんなメッセージは一言も言っていないのだが、結果的にそう言っているのがこの本である。特に後半は、「若い頃は私も苦労し、上司に無理難題を突きつけられ憤った」ような経験をもとに、「しかし今はその上司の言っていることがよくわかる」と来る、の繰り返しである。こういう事を言う人物は、オレには『偉い』人物とは思えない。『偉くなってしまった』人物であろう。
それとは別に、オレ自身が、この原田氏がマクドナルドCEOに就任してあれこれ(周囲に迷惑をかけながら)改革を断行している最中にマクドの中の人だったので、当時の現場を知る人間として非常に興味深かった。店長さんはどうやら店長仲間では『デキる人』だったようだが、それでも見るからに大変そうだったなぁ。
ともかく、経営する側に立つ者、小さくても何かのグループのリーダーになった/なる/なりたい人には、その経営すべきものの大きさを問わず、それこそ孫子の言う『厳』が必要であり、分かりやすい事例を用いてそれを説いている本書は、経営者的発想の必要性と重要性を理解する上では、良書であろう。これを地でやる『将』の下には全然つきたくないけれども。