バリトンサックスの落とし穴とその対策

バリトンサックスは、吹奏楽アルトサックスによく陥りがちな罠である「締め過ぎアンブシュア」では低音が出ない。
従って、思わずというか思いながらというか、口を緩めがちである。そのほうが、特に低音ではよく鳴らせる(ような気がする)ので、且つ高い音域は使う機会が(特に吹奏楽では)少ないので、そのゆるいアンブシュアが正しいと思い込みがちで、あれ?と思った頃には「ゆる過ぎアンブシュア」になりがちである。
不必要に緩んだアンブシュアでは、周囲の人々にとって基礎となるべき音を出すべきなのに、ピッチが低くなる。そればかりではない。それを口先だけで直すようになり、アタックのときに緩んで後で締め、びよ〜んとしゃくりあげるような、ピッチベンドが習慣化しがちになる。ジャズ研や、楽器奏法を知らない音楽の先生が顧問の吹奏楽部にありがちなダメバリサクのできあがりである。
ひょっとするとバリサク吹きなら誰でも一度は落っこちる罠かもしれない。
とか言ってる俺も最初はそうだった。それを見かねた先輩が教えてくれて、且つその通りに続けたら、治っただけでなくいろいろな症状が改善された治療法があるので紹介する。
しゃくりベンド癖を治す、と聞いて誰でも思いつくのはおそらくマウスピースだけでロングトーン、だろう。だが、マウスピースだけだとピッチの幅が広すぎて安定させにくいのだ。また、発音時のベンド癖は、タンギングが荒っぽいことに由来することが多い。タンギングを丁寧にするには、しっかりした腹式呼吸でブレスコントロールを行うことが大切なのだ。息を腹式呼吸で出しさえすればよいというものではなく、コントロールをしなければならないのだ。その上でのタンギングである。
ここから導かれる練習法とは、自ずから明らかであろう。
ネック+マウスピースの状態で、タンギングをせずにスパッと発音する練習を繰り返すのだ。初めは結構難しい。コツは、吹く前から唇はもちろん体の隅々まで神経をいきわたらせ、準備をすることである。
思っているよりも締めておかないと上手くいかないだろう。だが音が出始めてから締めるとすぐびよ〜んとベンドする。これはダメ。思ったより締めていても、正しくコントロールされた息であればちゃんと鳴る。ネックをつけただけでも、いい加減な吹き方とちゃんとした吹き方では全く「鳴り」が違うのだ‥‥バリサクはデカいのでネックだけでも鳴るのである!
アルトなんかだと、よく「よくネックをつけてって言うけど、意味無いよ。マウスピースだけでやらないと」などと言うが、バリサクのこの症状を治すにはマウスピースだけではかえって難しいのだ。