『演らない美学』と『高級一発芸』

excite書評コーナーの『日刊!ニュースな本棚』の『非モテの文化誌』から、『第21回 マジック・ハラスメントにご用心――吉行淳之介『手品師』の巻』

とあるバラエティ番組で「飲み会で嫌いなこと」というテーマでアンケートをとったところ、「マジックを見せられること、驚きを強要されること」が一位になったそうです。興味がなくても注目してあげないわけにはいかない、そもそもどこが驚きどころなのだかわからないとイライラしてしまう人も多いらしいマジック宴会芸。マジック・ハラスメント、略してマジハラという言葉が定着するのも時間の問題かもしれません。とはいえ、手品を見せるということでしか他人と交われない、そんな器用なんだか不器用なんだかわからない人もいるのです。吉行淳之介の短編『手品師』(『純愛小説名作選』収録)に出てくるのはそういう童貞青年です。‥‥

情報源は森羅万象ドットコムさん2005/10/10(月)分より。

ショックなニュースだ。
おそらく場の空気も読めない、しかもろくすっぽ練習もせずに見せまくる輩が、昨年までのブームのせいで大量生産されてしまったのだろう。タネだけで手品が成立するようなら苦労はしないのだが、そんな今の世のアホどもには3回死んでもわからないであろうことではある。たぶんオレ自身は5回目ぐらいで理解できるんじゃないかなと期待している。

しかしよく読むと、『マジックを見せられること』とある。『マジックを見ること』ではない。つまり、マジックを『見る』ための心の準備の無いままに『見せられる』ことが嫌われる原因なのであろう。やはり『声を掛けられるまでは演じない』という基本的行動規範は正しいのだ。どんなに準備していても、声がかかるまでは演じないのだ。

しかし、アマチュアがマジックを演じる機会とはどこだろうか、ということを考えると、圧倒的に宴会が多いだろう(オレはマジックを『高級一発芸』と位置付けている)。酒が入ったらやらないという人もいるが、おそらくそんなこと言ってちゃ披露する場など無かろう。それなのに、こちらから見せようとすると嫌われるのである。これは厳しい。