現象をどこまで宣言するか

これはid:dr-kojiさんのhttp://d.hatena.ne.jp/dr-koji/20050211#p2を見て少しだけ補足しようと思ったことです。

以前、スーパーテレビ特別版でHenry Evans師が演じたアレですが、『ほんじゃに!』での内田貴光師の演技は、この「現象をどこまで宣言するか」という部分に、確かに大きく違いがあったと思います。しかし、内田師の演技は、私はそれほど違和感というのか、悪い気はしませんでした。あ、もちろん私も『サーストンの3原則』は知ってます、というか私なりに『理解』しているつもりです。

少し前に、さんの掲示板だったか例の膨大な文献の中にあったのか忘れましたが、「外人マジシャンだと観客は楽しそうなのに、日本人マジシャンだとなぜみんな挑戦的になるのだろう」というような文脈の記述がありました。そこで『コンバージョン』の提唱者・しのぶさんは、よく外人マジシャンが演ずる時のもっていきかたの例として、「観客に対して現象をつきつけるのではなく、自分自身に対して挑戦する、という方法をとる」ということを挙げておられたのです。なるほど、これなら一種の大道芸的発想というと言いすぎかもしれませんが、観客もいいかんじで見ていられる方法と言えると思いますし、実際言われてみればそういう演出の外人マジシャンも多いように思います(例えば、先に挙げたスーパーテレビ特別版では、Lennart Green師の演技がまさにそうでした)。

その意味では、内田師の演技は、ぎりぎりセーフな感じがしました。ちなみにHenry Evans師は、「すばやくカットすることに挑戦」という前振りで、「実はもっとすごいカットだったんだよオチ」でした。

もう一つ番組全体を通して見たルーティーン構成という観点からすれば、今回の出演では、全体的にメンタル・マジック系であったと言えると思います。その意味で、「不可能性の高い命題を敢えて先に宣言すること」というMr. マリック師的演出は、全体としてはちょうど良かったのかもしれないな、とも、これはちょっとだけ思いました。なぜなら、もしこれが単独で演じられたら、私もちょっと違和感を感じるだろうなぁ、と思ったのもさることながら、ここであまりスライハンドな部分を見せてしまうと、他のメンタルマジックが活きて来ないような気がしたからです。メンタルマジックとスライハンドは水と油なところがありますから。なので、スライハンドを前面に押し出すよりも(実際は誰がどう見てもスライハンドに見えるけど‥‥ギミックがどうこうじゃなくてね)、メンタル系な演出で統一感を持たせるほうを狙ったのではないか、と、これまたちょっと思いました。

たぶん、このことについては本人はそこまで考えてないだろうけど。
※あ、内田師は別のことでもっと深く考えてると思いますけどね。


ま、内田師は普段から、クロースアップではメンタルっぽい雰囲気でやることが多いですからね(メンタル:スライハンド=2:1、ってとこでしょうか???)

ああ、手品でもっと書こうと思ってたことがあったけど、疲れたのでまたこんど。