プルトニウムに関する情報の紹介

プルトニウム(以下Puと表記)が福島第一原発敷地内から検出された、とのプレスリリースがこれまでにあり(3/28発表分4/6発表分)、無用な心配をする向きがあるようなので、これについて情報提供したいと思います。

まず、Puが吐き出す放射線α線」は、空気中を数cmも進むことができません。紙1枚でも止められる…と言うと言い過ぎかもしれませんが、その程度です。土壌に少しぐらいあったところで、靴を履いてれば平気です。

プレスリリースの文面によれば、東電は敷地内の数地点で定例的に土壌中のPuの分析をすることにしているようです。Puはヨウ素131のように放っといたらすぐ消えるものではない(消滅するには数万年かかる)ので、今後も調べるたびに検出されるのは当たり前です。その意味では、「再び検出された!」などと騒ぐことはありません。その量が多いのか少ないのか、増えているのかどうか、が重要です。

検出したPuの量は、プレスリリースの資料(3/28発表4/6発表)に書いてあります。そこには多い/少ないを判断する重要な指標「国内の土壌」での値=普段から身の周りの土壌中にどれだけ存在するか、も併記されています。これと比べると、今回の事故に由来するPuは確かに出ているが、「普段からそこらへんにある量」と大差ないことが明らかです。言い換えると、この量でガタガタ言ってたらどこにも住めないということです。

なお参考までに、量的な基準を紹介しておくと:

  • IAEA基準のレベル6(OIL6)、つまり「これぐらいなら大丈夫の国際標準」は、食物・水・牛乳1kgに検出される放射能について、Pu-238もPu-239もPu-240も全て「50 Bq/kg」(http://bit.ly/euqu47 表10、p46)
    • 土壌中の話ではありませんので注意
  • 日本国内基準の「暫定規制値」 http://bit.ly/foBuwU では、Puおよび仲間の核種もひっくるめて総計で、水・乳・乳幼児食について「1 Bq/kg」(これは厳しい!)、野菜・穀物・肉や魚や卵などについて「10 Bq/kg」

ところで内部被曝についてですが、Puが人体にとって危ないのは、経口摂取ではありません。経口摂取時の、胃腸管において吸収される割合「消化管吸収率」は0.001%放射線概論p.294)で、殆ど体には取り込まれません(なお取り込まれたPuは骨・肝臓に溜まります)。怖いのは、吸入摂取です。不溶性のPu-239を吸入摂取した場合、溶けて肺胞壁から体内に吸収されること無く肺に沈着し長く留まることが知られています。

そこで、Puがどれぐらい飛ぶのか、というのが気になるかもしれませんが、そうそう遠くまでは飛びません。もちろん気象や放出の状況によりますが。中には、チェルノブイリ事故由来のPuが日本に届いたことを示す気象研究所の資料を引いてきて「こんなに飛ぶじゃないか!」と危機感を煽る人がいますが、これは慌てん坊さん。同じ資料の次のページに、

137Cs等揮発性放射性核種とは異なり、日本では顕著なプルトニウムの増加は見られなかった。この原因は、プルトニウムが比較的大きな粒径の粒子に含まれており、輸送の間でサブミクロンの粒子に含まれている137Csと比較して効率的に大気中から除去されたためである。

と記されています。この件は、東大・早野教授の解説入りの図がわかりやすいです。

なお余談ですが、上記の気象研究所の資料によると、昔はもっとたくさんPuが身の周りに降ってたことも示されています。これも早野教授の解説入りの図がわかりやすいです。

以上、Pu情報に関するまとめでした。報道・発表のご参考になればと思います。