「温暖化は人為起源CO2が犯人」説はどれだけ支持されているか?

Financial Post紙のコラム"FPCOMMENT"欄 January 3, 2011付け記事に、(日本では)一般に信じられている地球温暖化CO2犯人説が「科学者の総意である」という言い回しのウソについて書かれていることを知った(Financial Post紙は、カナダの全国紙National Post紙の金融関連を扱う部分なんだそうだ)ので、その全訳を試みた。どうしてもタイトルだけ和訳できなかったが‥‥拙い訳だが、意味とともに、ことの重大さが伝われば幸い。
(※Jan 14 22:50 誤訳を1件修正)
(※Jan 14 23:23 誤訳をさらに1件修正+段落1つまるごと訳し忘れてたのを追記)

Lawrence Solomon: 97% cooked stats

そういえば「気候変動について科学者のコンセンサスが形成されている」ってどうやって知ったんだっけ?評論家やマスメディアがそう言ってる。じゃあ評論家やマスメディアはどうやって知った?最近まで、2,500人という数字が取り上げられていた――これは国連の気候変動に関する政府間パネルIPCC)に参加している科学者の数である。これら2,500人がIPCCの見解を承認してきた、と評論家やマスメディアは信じていた。

困ったことに、殆どの評論家やメディアは、自分たちが誤っていたことに気付いてしまった――これら2,500人の科学者達はIPCCの結論を認めておらず、またIPCCの巨大な研究成果のあちらこちらをちょびっとだけチェックしただけだったのだ。さらに困ったことに、その「チェックした人々」の多くはIPCCエスタブリッシュメント(支配者層、体制側、ぐらいの意味かな)であり、その人たちが実はIPCCの結論を否定していたのだ(時には猛烈に否定していたことも)。

それでどうなった?評論家達は何とかコンセンサスが形成されていることを主張しようと、代わりの別の数字を探し、そして見つけた:「世界の気候科学者の97%」が気候変動についてのコンセンサスを受け入れているのだと、ワシントン・ポストの記事、イギリスのガーディアン紙、CNNやその他のニュースが今や主張していて、200万かそこらのブログも同調している。

この数字もまた評論家やマスメディアを困らせることとなるだろう。この数字はの出所は、Maggie Kendall Zimmermanという、イリノイ大学でPeter Doranの指導を受けていた学生の2008年の修士論文である。Peter Doranは地球環境科学の准教授である。この2人の研究者は、10,257人の地球科学者を対象にした調査を行った。得られた結果に2人はとてもがっかりしたに違いない(俺注:コンセンサスは得られていない、IPCCに賛同している人は多くないという結果だった、の意味だろう)――最終的に、2人はその中のたった77人だけを取り上げることにした。その中の75人が「人間活動が気候変動に影響を及ぼしている」と考えていた。75/77は、評論家達が当てにしていた「97%」となる。

その2人は結託して、自分たちの調査から、地球気候に関係があるのは太陽活動や惑星運動(俺注:公転軌道の変動のことだろう)だろうと考えている数千人の科学者達を除外し始めた。除外されたのは、太陽物理学者、宇宙科学者、宇宙論の専門家、物理学者、天文学者、気象学者である。そうやって残ったのが、10,257人の地質学、地理学、海洋学、工学、古生物学、地球化学、つまり例のコンセンサスに同調しておいたほうがいくらか得をすると思われる分野の人々なのである。2人はまた、誰が気候変動の問題に答えることができるか(俺注:誰を調査対象とするか)を考える際に、研究業績を考慮に入れないことにした――調査対象者は研究機関または政府機関の人物の中からその職位を基準に選ばれた。また調査対象者の選定には、学位も考慮されなかった――調査対象者のうち約1,000人は博士号を取得しておらず、中には修士号さえ持っていなかった者も含まれていた。

その他の分野からの参加率を高めるため、2人は2分で埋められるような簡単なアンケート調査を行った。アンケート調査はメールで行うと回答者に返信の手間が掛かるため、オンラインで調査を行った。こうした努力にもかかわらず、殆どの人々はこの簡単な調査が回答に値するものとは思わなかった――たった3,146人(つまり30.7%の回答率)しか、次のような2つのキー・クエスチョンに答えてくれなかった:

  1. 1800年代と比較した場合、全球平均気温が全体的に上がっていると思いますか、下がっていると思いますか、それとも相対的には一定であると思いますか?
  2. 人間活動は全球平均気温の変化に重大な影響を与えている要因だと思いますか?

地球科学者達に投げかけられたこれらの質問は実のところ質問にもなっていない。私が文字通り数百人の懐疑論者達とここ数年に渡って議論を重ねて来た経験から言えば、1700年代から地球が暖かくなってはいないという人は居ないし、人間活動が何らかの形で最近の温暖化に寄与していることはないという人も殆ど居ない――二酸化炭素排出とは全然関係なく、都市化と森林を農地にするために伐採されることが気候に影響を及ぼしていることに疑いを挟む人も殆ど居ない。数字を出せと強いられれば、温暖化懐疑論者達は、人間活動が温暖化に寄与している割合は10%か15%だと言うかもしれない;あるいは最大でも35%という人もいるかもしれない。懐疑論者たちは単に「人類が地球温暖化の主役である」ことを否定しているだけなのだ。

驚くべきことに、1つ目の質問に回答した地球科学者の90%しか気温が上昇してきたとは思っていなかったのだ――私は、地球は今からちょっと前の1800年代には地球は小氷期だったので、(俺注:従って、小氷期以前の状態に戻るだけで相対的には「暖かくなった」ことになるだけに)100%に近い数字になると期待していたのだが。しかし回答者の中には、おそらく、質問文を過去1,000年間を含む話をしているのだと解釈した者もいただろう。過去1,000年間と言えば、そのころには地球は中世の温暖期にあり、現在よりも暖かかったと広く考えられている。

2つ目の質問について言えば、82%の地球科学者たちが「人間活動は温暖化に重大な影響を及ぼしている」と答えている。ここには質問の曖昧さが作用している。懐疑論者達は人間活動が要因になっていることはその通りだと考えているため、彼らの回答は、彼らが10%、15%、あるいは35%の上昇を「重大な寄与」と考えるかどうかによって決まる。そうだと思う人もいれば、そうでないという人もいるだろう。

いずれにせよ、例の2人の研究者は、82%という数字が信頼に足るだけのコンセンサスというには足りないのではないかと恐れたに違いない――およそ5人に1人は温暖化は人類のせいだとは言ってないことになる――そこで彼女ら2人はもっとパーセンテージが上がるような部分集合を探した。そして見つけた――ほぼ見つけた――最近出版した査読付きの研究論文の殆どが気候変動に関するものでない地球科学者の全てを除外することによって。この部分集合を設定することで、残った科学者の数を3,000以上(俺注:操作する前の全回答者数)から300以下まで減らした。しかし新たに得られたパーセンテージも、2人の理想には足りなかった。なぜならその部分集合には気象学などの分野の人が含まれていたからだ。このような分野の研究者を、Doranは、この温暖化問題についてはよく知らない人々だと考えているのだ。「一般市民の殆どは気象学者が気候のことを知っていると考えているが、殆どの気象学者は実は非常に短い時間で起こる現象を研究しているのだ」と彼は説明し、気象学者を除外したことを正当化している。2人はこういう理由で、主として気候の分野で研究論文を出版しているだけでなく気候学者を自認する地球科学者達からの回答を喧伝することにしたのだ。

「彼らは気候科学について研究し、成果を出版している人たちだ」とDoranは説明する。「だから私が思うに、その研究成果の言うことは、煎じ詰めれば、気候科学について知れば知るほど、より地球温暖化とそれへの人類の寄与を信じるようになるだろう、ということだ。」

一度このようにばっさりカットしてしまえば、どの程度の学位を取得したのかもわからないような科学者77人中75人が正統派地球温暖化信仰を相変わらず支持していることになる。このときようやく、2人の研究者、つまり修士課程の学生とその指導教員は、彼女の修士論文で指摘することとなる新発見に満足した。読者の皆さんは満足ですか?