経済ってそういうことだったのか会議(佐藤雅彦&竹中平蔵)

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経済ってそういうことだったのか会議 (日経ビジネス人文庫)


これはいい経済学入門書。
ピタゴラスイッチ』のあの佐藤雅彦が、大臣になる直前の経済学者としてのあの竹中平蔵に体当たりする対談の集録である。むちゃくちゃ面白い。面白いといっても笑いが止まらないのではなくて、知的興奮を覚えるという意味で。
テーマは10個。目次を書き出してみると「お金の正体(貨幣と信用)」「経済のあやしい主役(株の話)」「払うのか撮られるのか(税金の話)」「ないがアメリカをそうさせる(アメリカ経済)」「お金が国境をなくす(円・ドル・ユーロ)」「強いアジア、弱いアジア(アジア経済の裏表)」「いまを取るか、未来を取るか(投資と消費)」「お金儲けはクリエイティブな仕事(起業とビジネス)」「人間とは『労働力』なのか(労働と失業)」「終章:競争か共存か」である。ひょっとするとアメリカ経済の話や、ユーロの話、アジア経済の話などは、この対談がなされた2000年頃の世界の状況‥‥9.11以前‥‥をある程度把握していないと話題の前提がよくわからないかもしれないが、それ以外の部分、例えば「お金」とは何か?とか、なぜ人頭税じゃダメなのか?とか、そういう不変な「経済学的な知」の部分は非常にためになる。
そう、「ためになる」のである。社会人として必要とされる「知識」は往々にして皮相的で、具体的で、各論的である。曰く、所得税が云々とか、申告したらどうこうとか、円高になったらどうなるんだとか、‥‥ところがそういう知識の枝葉ではなく、それらが生えてくる根っこのところにある部分が理解できれば、皮相的で具体的で各論的なマメ知識たちは、実際の生活の中で躍動する「知恵」となる。たぶん、これは経済に限ったことではなく、俺の専門である宇宙や地球の学問だって同じことだろうと思う。
また、興味深い点が1つ。竹中平蔵が、サイエンスカフェならぬ「エコノミクスカフェ」をやりたい、というようなことを言っている。世の中、「学問」があまりにも足りな過ぎる、という思いは、やっぱり理科人だけではないのだなと思った。
話を本書に戻すと、対談であるためか、またこの2人であるからこそ、でもあるのだろうが、非常に読みやすい。これが実は困ったことで、読みやす過ぎて、頭に残りにくいのである。こういう場合、頭に入れるには、同じ分野の別の本を読みながら、参考書のように読み返すことを何度も繰り返すしかない。とても大切なことがたくさん書いてあるので、ことあるごとに何度でも読み返してみようと思う。