「はとバス」六〇年――昭和、平成の東京を走る(中野晴行)


「はとバス」六〇年――昭和、平成の東京を走る(祥伝社新書208)

  • 著者: 中野 晴行 (著)
  • 新書: 224ページ
  • 出版社: 祥伝社 (2010/6/30)
  • ISBN-10: 4396112084
  • ISBN-13: 978-4396112080
  • 発売日: 2010/6/30
  • おすすめ度: ★★★☆☆



俺は、「はとバス」は、確かに、知っているが乗ったことが無い。そういう人は多いだろう。今年60年を迎えたらしい。そんなに長く続いていたとは。
筆者は、そのはとバスの良さを、「住んでいる人にとっての東京」ではなく「ハレの場としての東京」を手軽にかつ簡潔に紹介してくれること、「分かった気にさせてくれる」こととしている。戦争直後で荒れ果てた東京で走り始め、復興から現在までの変化にぴったり寄り添ってきたはとバスの歴史、特に取り扱ってきたツアーの内容の変遷を通して、東京という街のダイナミズムを描き出そう、としている。
本書のその試みは、おそらく成功している。歴史はいろいろな切り口があるものだが、1つの東京史が鮮やかに感じ取れて、面白く読めた。
一つ残念なことは、本当に紹介するだけで、あるいは「描く」だけで、「だからどうなん?」という部分がほとんどなかったことだ。ここまでやってくれたんだから、「そこに描かれたもの」から、「東京の本質」のようなものに迫って欲しかった。その意味では、一番面白かったのは、本書のコンセプトというか、アイデアとそこに至る経緯を述べた「イントロダクション」の章だったかもしれない。