工学試験機「はやぶさ」と科学衛星「はやぶさ2」計画に関する個人的見解

はやぶさ」は、地球に帰って来れて、本当に良かった。それはその通りだが、「はやぶさ」ミッション自体は、「失敗」であることを忘れてはいけない。
はやぶさTwitterが超絶に面白かっただけに影響が大きかったのだろうが、「はやぶさ」を擬人化して語る人が多かった。あれこれやってすったもんだして、苦労して帰ってきて、「おかえりー」「偉かったねはやぶさ君!」と。
断じて違う。
はやぶさ」は全然予定通りに動かなかったポンコツである。偉かったのは、ポンコツを最後まで動かし続けた運用チームである。
もちろん、度重なるトラブルを乗り越えられるだけの「こんなこともあろうかと」システムを作ったのは偉かったのだが、はやぶさは工学試験機、即ち「日本の技術を世界に見せびらかすための装置」なのである。予定通り動かなかった事実は、猛烈に恥ずべきことなのだ。
喩えて言うなら、「新型自動車を作りました!見て下さい!!‥‥あれ?おかしいな‥‥」ということなのだ。あるいは、ろくに動かない新型TVを納品して、映らないからバンバン叩いた挙げ句に、「ほら映りました」って言われても、それは「成功」じゃない。
おそらく、何も考えずに「はやぶさ」で大騒ぎした人の大多数は、直後のワールドカップで馬鹿騒ぎしているのだろう。きっとその間に、はやぶさ帰還の「感動」をすっかり忘れるのだろう。
そしてカプセルに何も入っていなかったら‥‥きっと怒りだすのだろう。○○億円つぎ込んでおいてこれか!と。
何度でも言うが、「はやぶさ」は工学試験機である。びっくりどっきりメカが動くか動かないかが問題であって、試料が入ってるかどうかは問題じゃないのである。装置がマトモに動いてないのだから、試料が入ってないのは当たり前。怒ることではない。

だから、後継機というか後継プロジェクトの「はやぶさ2」は、いけいけドンドンではやし立ててはいけないのである。同じことをやっては同じ失敗を繰り返すだけだ。しかも「はやぶさ2」は科学ミッション、つまり機械が動くかどうかではなく、もたらす成果で評価されるミッションなのだ。
はやぶさ帰還」の勢いで「はやぶさ2」を考えるのではなく、「事業仕分け」に感情的になるのでもなく、何のためにどんなモノを飛ばすのか、で判断しなくてはならない。
現時点で俺が聞くところでは、「はやぶさ2」は「はやぶさ」のコピーではなく、はやぶさがやっちまった多くの失敗(!)を繰り返さぬよう、さまざまな対策が施されたものになると聞いている。
おおっ、それは素晴らしい。
それならば、大至急、プロジェクトをスタートさせなければならない。もう打ち上げのタイミングまで時間がない。そのタイミングを逃すと、次のタイミングはかなり先になる。その間に同じことを他国にやられてしまい、日本の得意分野が一つ消えることになるのは確実だからだ。
繰り返すが、「はやぶさ2」で必要な技術は、「はやぶさ」では実証できなかった(あの「よく動いた」とされるイオンエンジンすら、序盤早々に4つのうち1つが壊れているのだ)。だからこそ、日本が是が非でも今すぐにスタートさせなければいけない「はやぶさ2」が、「はやぶさ」の失敗を糧にどんな対策を講じたか、という点は、注意深く考えなければならない。それこそ「○○億円をドブに捨てた」ことになるからだ。