拡張プレゼン道:プレゼン技術の使いみち

学生に、プレゼンの重要性を説こうとしても、全然ピンとこないようだ。よく聞く表現を借りれば「数学なんて使うことないしw」というやつと同じ状態である。
それもそのはず、プレゼンのレクチャーを受けるような時期には、まともなプレゼンを見る機会もないし、あったとしても例えば学校で課外授業的に無理矢理聞かされた講演会ぐらいでまともに見ていないからだ。
だからまず、プレゼンあれこれの本編に入る前に、学ぶことはどこで使うのか?ということを説明することにしている。

就職活動(面接)

どんどん就職活動を始める時期が早まっている。だから、大学生の場合、最も早くプレゼン技術を使うことになるのが、不幸にもこの「人生を左右する」イベントになることが多い。
プレゼンというとパソコンでスクリーンにスライドを投影してしゃべることしか思いつかない人も多いのかもしれないが、人前に顔を出して何か話す時点でプレゼンである、と思っているぐらいでちょうど良いと思われる。それどころか、友人は、何回目かの選抜で「○○について5分間のプレゼンをせよ」という課題があったという。
ちなみに私自身が考える「人生を決めるプレゼン」は、この「就職活動の面接」と「プロポーズ」であるが、後者はプレゼンどころではないし(体験談)、むしろプレゼン技術云々を凌駕し破壊するほどの熱意と誠意と緊張感がなければならないと思うので、本論では扱わない。

ゼミ発表・卒論発表

おそらくゼミと呼ばれる授業形態では、「担当教員」のみならず参加者各々が「発表者」となって、参加者たちに「レクチャー」をし、且つ双方向に議論をする、ということが行われるのではないだろうか。まさしく、プレゼンという言葉で想起するイメージに適合するものの学生版である。そして卒業を賭けたそれが卒論発表である。研究内容の成熟度・完成度が低ければ低いほど、単位なり卒業なりを決めるファクターとしてプレゼン技術の稚拙が重要になってくる(体験談)。こういった「ゼミ」のような場できちんとプレゼンまで指導してくれる教員に当たればラッキーだと思ったほうが良いだろう。ただ、そういったことも学べる「ゼミ」を受講するのは大学の3〜4回生程度以降であることが多いため、残念ながらもっと重要な就職活動が終わった後になることが多い、というのは前述の通りである。

自社商品の売り込み(営業)

自社のことを知る、ということで新入社員が早いうちに配属されるのが「営業」である、という話をよく聞く。様々な形で、手を替え品を替え(というより手をいろいろ替えて「品を買え」と言う行為なのだが)、自社商品をアピールし、購買行動に誘導する。ここで商品というのは、何も「もの」には限らない。アイデアや企画といった「こと」もあるし、「ひと」のこともあるだろう。場合によってはその「ひと」は自分自身かもしれない。就職活動が「自分を売り込む」ことであるように。

社内会議

内部向けの会議には2通りある。前向きな会議と、後ろ向きな会議だ。前者は企画会議など。後者は営業成績の報告会などだ。前向きな会議の場合には、まだこの世に存在していない新しいもの(・ことetc.)をアピールしなければならないが、後ろ向きな会議では過去のことをアピールしなければならない。いずれの場合にも、そのアピールされるコンテンツと自分自身がセットになっていることを忘れてはいけない。「営業成績が悪いのは自分のせいではない」ことを如何にして正当化すればよいだろうか?

全てに共通することは、何らかの「商品」を売り込むと同時に‥‥誤解を恐れず言えば「売り込むと見せかけて」‥‥自分自身という「商品」をアピールしている、ということだ。従って、「プレゼンが上手くいかなかった」というのは、「商品」を買ってもらえず金額的にゼロになる、のではなく、そんな「商品」しか持って来れなかった自分自身の評価を下げてしまって収支はマイナスになってしまうのである。「上手くいかなかった」で済めばまだましで、悪印象を植え付けてしまうと、それをひっくり返すのは容易なことではない。プレゼンという行動は、まさにこの意味で「諸刃の剣」なのである。

(続く)

以下メモ:パフォーマンスは?