「マトリックス」と宗教と疑似科学

我々の現実は実は全て仮想現実、研究者が奇想天外な論文発表
【Technobahn 2008/1/18 13:58】我々が現実として捕らえている現象の全ては実はコンピューター内に作られた仮想現実ではないか、とする究極の物理学理論をニュージーランドの研究者が5日、論文発表を行った。

 我々が生きている世界は実は他者が作り出した仮想現実であり、我々が見ているもの、暮らしている社会の全ては現実には存在しないという考えは映画「マトリックス」のモチーフにもなるなど、SFの世界では一般的だ。しかし、この考えを学術的な観点から研究を行い、論文発表するという研究者はデビット・ボームなど一部の例外を除くとこれまでのところ少なくとも本流の科学研究者の間では異端視されてきた。

 この奇想天外とも呼べる論文発表を行ったのはニュージーランド、マッセイ大学のブライアン・ウィットウォース(Brian Whitworth)博士。

 ウィットウォース博士は宇宙の物理現象の全ては情報として換言できるとした上で、宇宙は多次元の宇宙的時間軸で動いているシュミレーションの産物であると推論。そう考えることによってビッグバンがなぜ起こったのか、といった物理学上の疑問点も簡単に説明が付くと述べている。

 その上でウィットウォース博士はコンピューター内のシミュレーションでは起こりえないことが、我々の世界で起きることを示すことができれば、それは仮想現実ではなく、現実世界であると証明したことになるだろうとまとめている。

【Technobahn 2008/1/18 13:58】より。
疑似科学」とも呼ばれる、いわゆるトンデモな話だったりオカルトだったりの類いに対して、科学者は敢然と立ち向かい、まさに「啓蒙」をして行かなければならない‥‥言うのは簡単だけども、実はとても難しい。なぜなら、そういうことを主張する疑似科学な人は、「科学的」な思考が出来ないのである。「論理的」な思考と「科学的」な思考が異なることが理解できないのだ。論理を積み上げるだけで全て正しいのであれば、いわゆる論理学のトートロジーというやつは全て科学的に正しくなってしまう。
そして最もやっかいなのは、疑似科学は一種の宗教なのである。宗教的な信仰に対して百万言を費やしたところで無駄なのである。そうであって欲しいと心底願っているのだから、全身全霊をかけて論破しようとする。逐一証拠を挙げるのは現実的ではないような論理にもっていった上で「だって証拠ないでしょ?」というような「理論武装」‥‥気体の状態を知るには全ての粒子の運動を記述すればよいなどというような「論理」に近いか?‥‥をしてみたり。あるいは「ない」ことを証明しろ、と言ってみたり。そして宗教は、反駁不可能な理論武装だけはしてあることが多い。
件の論文も、反駁不可能だったからこそ発表できたのだろう。査読が入ったとしても、反駁不可能であれば、査読者としてはお手上げ、となったのであろうか。あとは編集部・編集者が、当該雑誌に掲載するのがふさわしいかどうかの判断を下すことになるが、その時点でも落とせなかったのだろう。しかし、繰り返すが、反駁不可能であることと、科学的であることは全く異なることなのである。科学は辻説法ではないのである。このことを、こんなWeb日記をもしお読み頂ける方々が居られるなら、御理解頂きたいと切に願う。