「指が回らない!」という人のためのトレーニング法その2:しずくとばし運動

前回解説したストレッチ(id:DrMagicMusic940:20060228#p1)と併せて行うと非常に効果のある『体操』を御紹介する。
これは中学時代、音楽の授業で、先生(この人は中学・高校ブラバンの指揮者・指導者でもあり且つ元プロのオーボエ奏者である)が紹介してくれたもので、曰く「若い頃、クラシックギター奏者から聞いたトレーニング」であるらしい。

  1. 両腕を前に伸ばす。手は軽く握る。どれぐらい軽くかというと、卵が入るくらいというか、四指の先が軽く親指の先に触れる程度。力は入れない。
  2. パッ、と手(指)を開く。『パー』にするのではなく、単に軽く開くだけ。机とか手の甲とかについたゴミを人さし指や中指の先で弾き飛ばすような、『親指先のストッパーがはずれたら勢い良く指が伸びた』ぐらいの感覚で四指を開く。するとまるで手を洗った後に濡れた手のしずくをパッと飛ばすような動きになる。
  3. これをちょっと早めのテンポで、200回行う。慣れないうちはおそらく、50回前後で、下腕部の外側の筋肉がギシギシと音を立てるかのような苦痛が出てくるだろうが、そこは根性で耐える。
  4. これを、朝起きた時、朝食後、昼食後、夕食後or入浴前か後、就寝前の1日5回、上記の通り各200回ずつ行う。

一見すると、握力を鍛えるためにグーパーを繰り返すトレーニングと同じように思えるかもしれないが、全く違うことを目指している。ではこの運動、何が目的なのかというと、こういうことだ。

人間の手というか指は、類人猿とかいう話をせずともわかると思うが、ものをつかむように出来ている。なので、ものをつかむ動き=『指を閉じる動き』のスピードは、もともと速い。しかし、ものを離す動き=『指を開く動き』のスピードは、鍛えなくては速くならない。もともとそういう風にはできていないからだ。

楽器を演奏する場合にこの事実がどのように効いて来るかというと、例えば木管楽器なら、キーを閉じる指の動きは意識しなくても速いのだが、キーを開く(離す)動きは鍛えなければ遅いままになってしまうということなのだ。そして、運指の軽やかさや速さ、正確さは、むしろキーを開く動きで決まってしまう。これはトリルの練習を思い浮かべればわかるだろう‥‥トリルを速くするためには、キーを閉じることよりも開くことを意識すればよい、と習わなかっただろうか?(習わなかったのならこれからそう意識するべし)。

握力を鍛えるのではなくスピードを高めるためのトレーニングなので、上記の『体操』は、力を入れてはいけない。むしろ常に力を抜いて行うことが大切である。

前回御紹介したストレッチとセットで行うことを強く推奨する。1ヶ月も辛抱して続ければ、びっくりするほど運指が軽やかになるだろう。騙されたと思って1ヶ月続けてみるべし。