1年が早く過ぎ去って行く度合いとその理由

高校の授業で、『人生の半ばは9歳である』という話を聞いた。簡単な数学モデルを使った話だったが、それを後にきっちり自分の手で確認したので、鮮明に覚えている。以下に紹介しよう。

人生山あり谷ありであるが、平均的に言えば、x歳の人にとって、その1年は、『いままでの人生の中での1年』であり、あの1年この1年といろいろな1年の記憶がある中での1年である。したがってその1年の『重み』は、その人の生きてきたx年間全体からすれば、1/xと表すことが出来る。つまり、その1年の重みをyをおくと、

y = 1/x

という簡単な関数で表すことが出来よう。つまり、『その人にとってのある1年の重みは年齢に反比例する』ということだ。

次にその人が死ぬまでに感じた『人生の重み』は、産まれてから死ぬまでのyを積算したものになる。これは積分で表せて、

y = ∫1/x・dx (積分範囲は産まれてから享年まで)

これは、上手く積分範囲を設定すれば、高校のいわゆる理系数学の範囲で計算できる。ここで、計算を簡単にするために、次のように仮定する。

  1. 0歳の期間には記憶が無い
  2. 人生81歳までとする

そうすると、積分範囲はx=1からx=81までとしてよいことになる。ここまでくると、『人生半ばは9歳』が、何と頑張れば暗算でも証明できてしまう(オレは暗算でやるのは無理だが)。では証明いってみよう。

人生の重み総計をSとする。また人生のうち9歳までの重みをsとする。すると、
S = ∫1/x・dx (積分範囲はx=1からx=81まで)
s = ∫1/x・dx (積分範囲はx=1からx=9まで)
と表せる(以下、計算の註釈は脚註にまとめる)。すると、
S = ∫1/x・dx (積分範囲はx=1からx=81まで)
= ln 81 - ln 1 [*1] [*2]
= 2ln 9 - ln 1 [*3]
= 2(ln 9 - ln 1) [*4]
= 2 ∫1/x・dx (積分範囲はx=1からx=9まで) [*5]
= 2 s
つまり、『そこまでの人生の重み』が、『予定される一生全体の半分』になるのは9歳なのである。このことと、大脳生理学などで言われる『ヒトの脳が最も成長・発達するのは9〜10歳ごろ』という話とは、無関係だが、なんかこう、変に信憑性が高まるようなかんじで、面白い。

*1:ln は自然対数、いわゆるlogのこと

*2:1/xは積分するとlnになる

*3:対数の計算法則と81=9の2乗、という事実から。ここを簡単にするために人生81年としたのだ。

*4:ln 1 = 0だから、カッコの中でも外でもいっしょ

*5:カッコの中について、この計算の最初のところと同じことを逆向きにやっただけ