南斗最後の将の塔内、海のリハクの眼前で、ケンシロウラオウが互格の勝負を見せるシーンがある。そこで、北斗神拳究極奥義・無想転生が披露されるわけだが、のちのちの展開も併せて考えると、「無想転生」は以下のように解釈される。

  • 「無想」の境地に達することができる。
  • その「無想」の状態に於いて繰り出す技は、その状況に最適化されたものが実行される。
  • 最適な技は、北斗神拳とは限らない。むしろ他人の技が出ることも多い。
  • その他人の技は、対戦相手の技を盗み取る奥義「水影心」によって蓄積されたものだが、その際、「無想」で出すためには、より深く自らに刻み込まれたものが優先的に採択されると考えるのが自然である。より深く刻み込まれた技とは、より深い「愛」「哀しみ」を持って刻み込まれた技と考えられる。
  • 「無想」の境地での身のこなし(体さばき)は、恐怖や欲望など、気配の元となる心的要因を持たないため、まるで己の実体を無にしたかのようなものになるであろう。特にサウザーの奥義「天翔十字鳳」を「水影心」で体現することができるケンシロウのそれは、まるで拳が通り抜けたかのような錯覚を覚えさせることであろう。またあたかも分身の術であるかのような描写が出てくるが、これもシュウの南斗白鷺拳奥義「誘幻掌」のコピーに、北斗神拳奥義「七星天心」をミックスしたものと考えればわかりやすい。

つまり、「無想の境地で気配を消した体さばきの中で、当意即妙に他人の技を繰り出す」という、奥義「無想陰殺」と奥義「水影心」の合わせ技のようなものと結論づけられる。

さて、話を元に戻す。無想転生お披露目の対ラオウ戦である。このとき無想転生は3回実行される。

  1. ハイキックをはじかれ床に打ち付けられ仰向けになったケンシロウラオウがパーンチ!しかしいきなり姿は消え、ケンシロウラオウの背後に立っている。
  2. ラオウが裏拳をぶーんと振り回すが、またしても消え、さらに分身の術のような体さばきの中で、ラオウの闘気が流される。
  3. ラオウ北斗剛掌波炸裂!!のはずが、脇の下を高速で通り抜け、すれ違い様に南斗水鳥拳かます

さて、2つ目と3つ目は、作中で描写されている通り、それぞれトキ、レイを体現したものだ。では1つ目は一体誰の技なのか。床に仰向けに寝転んだ状態から、おそらく目にもとまらぬ速さで飛び起き、一瞬で相手の死角へ移動する技。そしてケンシロウがそれ以前に対戦した相手が使った技。そんな条件を満たす拳法、実は存在するのである!!

おわかりだろうか?

答えは、ジャッカルの「右腕」とも呼ばれた、フォックスの使う「跳刀地背拳」なのだ!!