NHKスペシャル 地球大進化 46億年・人類への旅 DVD-BOX 1&2



NHKスペシャル 地球大進化 46億年・人類への旅 DVD-BOX 1



NHKスペシャル 地球大進化 46億年・人類への旅 DVD-BOX 2

これで感動しない奴は頭がおかしい。

最初の生命から今を生きる「あなた」まで続く生命の進化の道のりは、地球の進化と共にあった‥‥という認識は甘かった。結びつきはそんなもんじゃなかったのだ。

地球であれ、宇宙であれ、今までのこういった壮大なスケールの自然科学ストーリーは、あくまでもその「壮大さ」を売りにしていた。「想像を超えた」ところの話、「感覚がついていけないという感覚の面白さ」が好奇心を喚起する構造だった。だから、俺の知る限り、いわゆる「文系」を自認(あるいは「自任」と言うべきか)する人々の間には、「実感わかへん。私らと関係ないし、興味ない」という意見が少なくないように思う。

しかしこの番組は違う。壮大なスケールの地球の物語を、視聴者の「存在」そのものに直結してみせる。46億年の地球史と「あなた」は直接に関係あるのだ。「あなた」の背骨、皮膚、手、足、肺、目、言葉、「あなた」が生まれた子宮、胎盤、そして社会、さらには「あなた」の心までもが、地球の大異変によって生まれたのだ!‥‥それがこの番組のメッセージである。

この番組は、英語名を「Miracle Planet II」と言う。「II」というのはどういうことか。実は、1980年代に、NHKで「地球大紀行(英名:The Miracle Planet)」というスペシャル番組があったのだ。俺と同世代の科学者に少なからぬ影響を与えた大傑作である。少なくとも、「地球大紀行」の刷り込みがなければ今の俺はいない。あの当時(1987)、俺は小学6年生だった。

その「地球大紀行」で描かれた地球は、俺たちを奇跡的に育んでくれた「優しい母」であった(だからこそ番組テーマはたゆたうような4拍子であった)。しかし、「地球大進化」の地球は「あなた」のご先祖様達を、文字通り死ぬ寸前まで追い込むほどの困難を与えて徹底的に鍛え上げてくれた「荒ぶる父」なのである。だからこそ、番組テーマ曲は、常に変化を要求する3拍子(たぶん譜面的には6/8拍子だが)でなければならないのだろう。この印象の違いは大きい。音楽人としてこの偶数拍子と奇数拍子の違いは言及しておかねばなるまい。

地球大紀行」を始めとする20世紀の地球理解で止まってる人や、あるいはこういう話が初めての人々と、21世紀の「地球大進化」の橋渡し役(※橋掛人ではない)を好演しているのが、山崎努である。山崎努といえば俺の中で「念仏の鉄」(必殺仕置人)なのであるが(笑)、この番組のナビゲータは、まさに適役と言えるかもしれない。今にして思えば、ひょっとすると緒形拳も、という気にはなるのだが‥‥。

もう一つの重要なポイントは、さっきから書いているように、人称である。この番組の一番の特徴、いや特長と言っていいのだが、トークの基調が、「私たち」ではなくて、「あなた」なのである。これは、見ている当人(俺、あなた)が、どれだけ没入しているか、にもよるのだろうけれど、少なくとも俺ぐらい没入していると「あなた」と言われた瞬間に「どきーッ!」としてしまうのである(笑)。

まぁとにかく、地球ってのはひどい奴、DV父なのである。地球丸ごと岩も融けるほどの灼熱地獄にしてみたり、丸ごと氷漬けにしてみたり、大噴火&酸欠地獄で生物の95%を絶滅させてみたり、せっかくの住処だった海を大陸移動で消し去ったり。もうむちゃくちゃである。その数々を「あなた」の先祖がどのように乗り切ったか。その度に新しい能力を獲得していった、その結晶が「あなた」なのだ。「あなた」の存在そのものさえ揺るがすこの物語、興味があったら上のリンクからぽちっとどうぞ(笑)